自立するほどに、私たちはいろんなものを受けとることが難しくなります。
しかし、問題や困難にであったとき、「そのおかげで」という視点を持つことは、自分に与えられたものの偉大さを教えてくれるものです。
1.問題を財産や恩恵に変える「おかげ」思考
昨日の記事では、問題を財産や恩恵に変えることのできる、「そのおかげで」という思考についてお伝えしました。
「それがあったおかげで」という点を考え続けることで、問題は財産や恩恵に変えていける。 - 大嵜直人のブログ
問題が起こったとき、苦しいときやしんどいとき、なかなか前を向くのは難しいものです。
しかし、そうしたときに見ることができた光は、その後もずっと消えずにいてくれるものです。
これが、楽しいときやうまくいっているときとは、違う点です。
言葉を変えると、問題を抱えているとき、苦しい状況というのは、私たちの「そこから何を得るのか」という問いを投げかけているようでもあります。
それを考えるときに有効なことの一つが、「そのおかげで」という点をリストアップすることです。
「そのできごとが起こったおかげで」
そう考えられるものを、たくさんリストアップしていく。
そうしていくうちに、私たちはその問題や状況を、恩恵に変えていくことができます。
もちろん、すぐには難しいものです。
誰だって、問題が起こったときや、しんどい状況のとき、すぐに前を向いたり、プラス思考に切り替えることはできないことがあります。
けれども、「そのおかげで」という点を探す、というゲームをするような感覚でいると、少しずつ意識が変わっていきます。
昨日の記事では、そんなテーマでお伝えしました。
2.自立するほどに、受け取れるものが減っていく
「依存」と「自立」の心理
さて、この「おかげ」の思考を、今日は「自立」という点から見てみたいと思います。
私たちは、誰もが「依存」から「自立」、そして「相互依存」という成長プロセスをたどります。
誰でも最初は、自分では何もできず、誰かに与えてもらう「依存」の状態です。
生まれたばかりの赤ちゃん、入学当初の小学生1年生、新入社員など、みな「依存」から始まりますよね。
この「依存」の状態は、自分では何もできず、誰かに何とかしてもらいたい、という心理が強烈に働きます。
言ってみれば、自分に主導権がない状態のしんどさと、自分には何もできないという無力感、無価値観のしんどさがあります。
それが辛いので、人は何とかして「依存」から抜け出そうとします。
誰かに頼ることをやめて、何でも自分でやろうとするわけです。
これが、「自立」です。
「自立」した分、できることも増えますが、その一方で孤独感や孤立感を抱えやすくなります。
また、自分のやり方にこだわる分、他人と競争したり、勝ち負けにこだわったりといった問題を抱えやすくなります。
カウンセリングで扱う問題の多くも、この「自立」の問題です。
怖くて受けとれない心理
さて、この「自立」における傾向に、「受けとれない」という問題があります。
「自立」している分、誰かに何かをしてあげたりもしますし、組織の中で重要な役割を担うことも多くなります。
しかし、そうした頑張りが報われるかというと、決してそうではないわけです。
「自立」している人にとっては、そうした頑張りや役割というものは、他人から責められないための免罪符だったり、自分の価値を担保するものになってしまうことが多いからです。
それは、「依存」の時代に感じた、辛かった感情の裏返しなわけです。
「これだけ頑張っていれば、自分には価値があるよね」
「この役割は、自分以外の誰にもできないよね」
そうした怖れが原動力になっている分、もしそれをやめてしまったら…という怖れと、鏡合わせになります。
その怖れが、他人からの愛を「受けとる」ことを拒んでしまいます。
そして、受けとらずに与えてばかりいると、いつかは燃え尽きてしまうものです。
「こんなことをしても、結局何になるんだろう」
という、いわゆる燃え尽き症候群のような想いを抱くようになったりもします。
「自立」の受けとれない問題というのは、かくも切ないものです。
コントロールしすぎて受けとれない心理
「自立」している人が、なかなか受けとれない心理の一つに、「コントロールしすぎ」というものがあります。
「自立」的な人は、なんでも自分でやりたがります。
そして、相手や状況を、コントロールしようとします。
「依存」時代に、自分の思うように与えてもらえなかった分だけ、そのコントロールは激しくなります。
恋愛関係における、「相手からの束縛問題」も、このコントロールの心理がありますよね。
パートナーがどこで、何をしているか、何を考えているか、全部把握しておきたい。
そうしておかないと、不安になってしまうから。
そのようにコントロールしていると、いつしか相手からの愛を受けとれなくなってしまうものです。
相手から愛を伝えてもらっても、「私がそうさせているから」「私が言わせている」と感じてしまい、うれしく感じない。
そういった心理は、この「自立」のコントロールによる「受けとれない問題」といえます。
お察しの通り、これは恋愛関係に限った話ではなく、家族との関係、仕事やお金との関係においても、同じことが言えます。
3.「おかげ」を考える恩恵
受けとることができない、「自立」の問題。
この問題を考えるとき、ここまでみてきた「そのおかげで」という視点は、大きな気づきを与えてくれます。
なぜなら、ここで出てくる「おかげ」というのは、「自立」している人の思考の外にあるものだからです。
いわば、「自立」のコントロールの外にあるのが、この「おかげ」を考えたときに出てくる点です。
問題や困難が訪れたとき、「自立」的な人ほど、その状況をコントロールしたがりますし、またコントロールできないことに苛立ちを覚えたりします。
しかし、私たちが生きる中で、コントロールできることなど、いったいどれくらいあるのでしょうか。
私たちは、生まれてくることもコントロールできなければ、自分の身体の大部分だってコントロールできません。
ましてや、他人や社会のこととなれば、コントロールしようと考える方がおかしいのかもしれません。
じゃあ、コントロールできないから、どうしようもないかといえば、決してそうではないんですよね。
むしろ、その逆です。
この世界は、私たちが想像するよりもずっと大きなものを、与え続けてくれています。
私たちが、それに気づいていようと、そうでなかろうとも。
与えられているものの偉大さを知り、それを余すことなく受けとる、ということ。
それが、「自立」を手放すということであり、身を委ねるということでもあります。
「それがあったおかげで」という点を考えることは、「自立」して孤立しがちな私たちの視野を広げ、与えられているものの大きさを教えてくれるものです。
今日は、「そのおかげで」という視点を考える恩恵について、お伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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