豊かさをめぐる秋分の丹後路2 ~元伊勢籠神社・眞名井神社 参拝記
元伊勢内宮皇大神社での参拝を終え、そこから奥道へ。
先に訪れた「元伊勢外宮豊受神社」、「元伊勢内宮皇大神社」とあわせて、これから向かう「天岩戸神社」の3つが、「元伊勢三社」として親しまれていると聞く。
せっかく訪れたのだからと、神社の脇から伸びる道を歩いていく。
ご夫婦と思わしき二人連れが、前を歩いていた。
初めて訪れる場所、ひっそりとした山の中、一緒に参拝する方がいらっしゃるのは、心強い。
少し湿った山道を、ゆっくりと歩く。
ほどなくして、「日室ケ嶽遥拝所」が見えてくる。
ピラミッドに似た日室ヶ岳(岩戸山)は、原生林におおわれた神霊降臨の神体山です。
その頂上には磐座らしき巨岩もあり、皇大神社はもとこの山頂にあったとの伝承もあります。
また、日室ヶ岳遙拝所は、「一願さん」と呼ばれ「一つだけ願い事をすれば叶う」という一願成就の信仰が古くから伝えられています。
たしかに、見るほどに不思議な形をした山だ。
天照大神が降臨した山とも伝えられており、この遥拝所から拝む山の東側の斜面は、禁足地とのこと。
夏至の日、この山頂に太陽が沈むとのこと。
この日は、すでに太陽が高く昇っていたが、夏至の夕暮れは、さぞ神秘的な光景なのだろう。
以前に、冬至のころに伊勢神宮の内宮で日の出を眺めたことを思い出す。
一年のなかで、太陽は日々その高さと長さを変えていく。
春分、夏至、秋分、そして冬至。
日々移り変わりながら、一年という時間をかけてめぐる、太陽の旅。
そのめぐりに、人は祈りを捧げてきた。
今日も、ここに来ることができたことに、感謝と祈りを。
舗装された道もあり、勾配はあれど歩きやすい。
気づけば、二人連れの他にも、別の参拝客の姿も見えた。
「天岩戸神社」に向かう、階段。
けっこう急な勾配で、ゆっくりと下りる。
階段を下りた先にあった、社務所横の遥拝所。
本殿近くの足場が悪いため、足元の不安な方はここからでも参拝できるとのこと。
それにしても、神秘的な場所だった。
川のせせらぎの音が響く中、柔らかな光が差し込んで。
岩と川が織りなす風景に、息をのむばかり。
少し歩いた先に、本殿が見えた。
日室岳の下を流れる宮川沿いに、岩壁にはりつくように鎮座する、天岩戸神社。
天照大神がお隠れになったという、天岩戸。
天降った神々が座したと伝えられる巨大な岩「御座石」、神楽を舞ったと伝えられる岩「神楽石」といった巨岩が、周りを覆う。
御祭神は、櫛岩窓戸命(くしいわまどのみこと)と豊岩窓戸命(とよいわまどのみこと)、門を守る岩石の神様とのこと。
見る者を圧倒する、巨岩の威容。
人智のおよばない力を、想像させる。
伊勢神宮の近くの、天岩戸神社を思い出す。
あそこは、とても静かな、そして内省の場所だった。
この丹後の天岩戸神社には、力強さと豊かさを感じる。
どちらも共通しているのは、清らかな水が流れていることだろうか。
弟、須佐之男命の横暴に怒った天照大神。
その引きこもる場所に選んだのが、水のある場所だったのだろうか。
太陽神である天照大神が、水とともにあったのは、興味深い。
豊かさとは、水、うるおい。
この鎖をつたって、拝殿のすぐ近くまで行けるそうだ。
ただ、この日は斜面が濡れており、万が一のことを考えて、見上げて参拝するだけにしておいた。
一人旅、無茶は禁物。
岩戸山を眺めながら、内宮の駐車場への帰り道。
実に気持ちの良い秋の空が、広がっていた。
「元伊勢三社」への参拝も終え、豊かさをめぐる秋分の丹後路も、終わりに近づいてきたようだ。