大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

豊かさをめぐる秋分の丹後路2 ~元伊勢籠神社・眞名井神社 参拝

豊かさをめぐる秋分の丹後路1 ~飯尾醸造さんの稲刈り体験会


 

丹後の美しき棚田。

そこで黄金色に揺れる稲の収穫に、心が満たされた翌日。

早朝から、車を走らせた。

一人旅は「せっかく来たのだから」の精神が発揮され、どうしてもハードワークになる。

右手に見る宮津の海は、どこか穏やかな表情をしていた。

三連休最終日、日中はたくさんの観光客で渋滞するのだろうか。

7時半に、元伊勢籠神社の駐車場に着いた。

丹後の国の、一宮。

前日にもご挨拶したが、今日は奥宮の眞名井神社にも参拝できると思うと、足取りも急ぎがちになる。

元伊勢籠神社の駐車場から、眞名井神社までは、徒歩で15分ほど。

朝方の宮津の海を右手に見ながら、参道を歩いていく。

今日も、よく晴れてくれそうだ。

眞名井神社の参道への入り口。

「吉佐宮(よさのみや)」の文字が見える。

遥か神代の昔、この「眞名井原」の地に豊受大神(とようけのおおかみ)をお祀りしていたと聞く。

その後、崇神天皇の代に倭国笠縫邑から天照大神がお遷りになり、天照大神と豊受大神を吉佐宮と号して一緒に4年間お祀りしていたとのこと。

このあたり、豊鍬入姫命(とよすきいりびめのみこと)が、天照大神の安住の地を探して長い旅をされていたそうで、調べていると興味が尽きない。

なぜ、もとの大和国をお遷りになられたのか。

いまよりもはるかに移動にリスクがともなう中、不思議ではある。

参道の途中、彼岸花が咲いていた。

秋分の時候、それを忘れずに咲く彼岸花を眺めながら。

この地にともに祀られた天照大神と豊受大神は、社伝によると、天照大神が垂仁天皇の代に、いまの伊勢神宮内宮にお遷りになられた。

その400年ほど後、雄略天皇の代に豊受大神もまた伊勢の地(いまの外宮)にお遷りになられたそうだ。

この宮を「元伊勢」と呼ぶ由縁である。

いまの伊勢神宮に鎮座するまで、天照大神は倭姫命(やまとひめみこ)とともに、さまざまな地を御幸しており、それゆえに「元伊勢」の名はこの地に限らず、多くの地で見かける。

さて、両大神が伊勢にお遷りになられた後、本宮をいまの眞名井神社の地から、籠神社の地へお遷りして、社名を籠宮(このみや)と改めて、天孫彦火明命を主祭神としてお祀りされてきたそうだ。

一歩、また一歩と眞名井神社への参道をゆく。

遥か神代の世に、なぜ神さまが、わざわざ自ら遠出をしたのか。

そして、なぜ、2番目にこの地を選んだのか。

はじめにお遷りになった笠縫邑は、大和国(奈良県桜井市あたり?)と聞く。

なぜ、そこからはるか遠く離れた、この丹後の地を選んだのだろう。

考えるほどに、不思議だ。

そうこう考えているうちに、眞名井神社にたどり着く。

「匏宮(よさのみや)」の文字が見える。

早朝ということもあり、静かで静謐な空気が流れていた。

「天の眞名井の水」。

清らかな水の音。

この水は、籠神社海部家三代目の天村雲命(あまのむらくものみこと)が、神々が使われる水を黄金の鉢に入れ、天上より持ち降った御神水とされる。

この天の眞名井の水は、倭姫命によって伊勢外宮の井戸へと遷され、毎日天照大神と豊受大神にお供えされているそうだ。

実に、静謐な空気の流れる境内。

こころしずかに、手を合わせて。

本殿の柵の奥には、古代の祭祀場とされる「磐座(いわくら)」が。

たくさんの巨岩を眺めた、熊野の旅を思い出す。

磐座の主座には、豊受大神が祀られていた。

五穀豊穣、衣食住守護、諸業繁栄の神さま。

その名の通り、豊かさを象徴する神さま。

そして、磐座西座には、天照大神と伊射奈岐大神(いざなぎのおおかみ)、伊射奈美大神(いざなみのおおかみ)が祀られている。

そういえば、かの天橋立は、地上にいた伊射奈岐大神が、天上の伊射奈美大神に会いにいくためにかけた梯子だったそうだ。

天と地。

人と神。

月と日。

男と女。

生と死。

ふたつの極が、和合する。

それは、もともとひとつだったもの。

この地は、そんな場所なのかもしれない。

眞名井神社での参拝を終え、籠神社へ戻る道すがら。

小さなオレンジ色が、秋を感じさせてくれた。

二日続けて、参拝することができた。

境内はまだ、朝の静かな空気。

地元の方と思わしき方が、歩きなれた感じで参拝していく。

鳥居をくぐって、一礼してお参りを。

手を合わせて、静かに目を閉じる。

遥か昔、この地に天照大神と豊受大神が鎮座されていた。

豊かさの国。豊かさの宮。

さて、私にとっての豊かさとは、なんだろう。

そんな問いかけをしながら、旅を進めることにした。