「お山に雲がかかってるから、明日は雨かもね」遠く西の彼方に見える山脈を見ながら、よく祖母はそんなことを言っていた。
寒さは、どこか美しさとつながっている気がする。それは、春の暖かさや、夏の輝き、秋のはかなさには、ないものだ。冬の寒さのみが持つ、美しさが、確かに在る。
いい、お湿りですね。ふと、そんな声をかけられたような気がした。ええ、とても。いいお湿りで。そう、返してみた。
なぜ、男の子はキラキラに惹かれるのだろう。不思議だ。理由はなくとも、そのキラキラは、私の童心と寂しさを、大いに満たしてくれた。
時間を、味方につける。そんな時間を、増やしていこうと思う。
地に足をつけて、歩いて行こうと思う。
身を切る寒風、白く流れる吐息、凍える指先。最も寒い季節のそんな感覚が、好きなのかもしれない。