大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

旅情に寄せて

いらっしゃいませ。

秋も深まってきましたし、いい気候になりましたので、旅に出るには最高の時期ですね。少し紅葉は早いかもしれませんが、澄んだ空気を吸うだけでも癒されますね。 

それでは、今日は「旅」に寄せたテーマをどうぞ。


 

旅情に寄せて。

柔らかな陽光を浴びて、縁台に身体を横たえる。生い茂る木の葉の優しい色合いは、一足早く訪れた一年ぶりの季節を感じさせる。

時おり聴こえる蜂の羽音と、響く鳥の鳴き声。あの鳥は何という名前だろう。

日々朝起きてから寝るまで、何かを考え、心配し、準備し、処理し、こなし、また考え・・・

当たり前のようにやっている習慣。

 

けれど、本当は、

考えなければいけないことなどなく、

心配すべきこともなく、

準備しなければいけないこともなく、

処理すべきこともなく、

ただそのままに在ればいい。

人の生きる豊かさとは、諸々の尺度や基準や所有ではなく、

余白に、

無駄なことに、

ブランクに、

フォーカスできることなのだと思う。

何もしなくてもいい。

そのままで、あるがまま。

足りないものは何もないし、

全て満ち足りている。

そうすると不思議なことに、

やるべきことはなくなって、

やりたいことが浮かんでくる。

「ベキ」から「シタイ」への転換。

有限・怖れ・義務・分離・課題から、

無限・喜び・情熱・統合・天職へのパラダイムシフト。

どちらでも選べるという選択肢を持つ、ということ。

豊かさはきっと、その特異点に現れる。

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2017.9.10


 

夏の終わりの軽井沢に旅行に行った際の、帰りの電車の中で書いた言の葉です。

私が軽井沢を訪れるのは、2回目でした。

1回目は、10年ほど前に仕事で訪れました。仕事上のミスの処理でした。当時ずいぶんとワーカホリックだった私は、名古屋~東京~軽井沢の往復の新幹線の車中も仕事、仕事。軽井沢に着いて顧客と会ってお詫びして、品物をお届けして、即帰社。滞在時間わずか1時間以内。夜に帰社してからも、まだ仕事。

軽井沢というとそんな想い出でしたが、先日は2日間、ゆっくりと何もしないぜいたくな時間を過ごさせて頂きました。街全体にクーラーがかかっているような涼しい気候。そして観光地のような通りがありながら、一本入っただけでもう小鳥の声と、落ち葉を踏みしめる足音しか聴こえないような静かな別荘地。そんな軽井沢が大好きになりました。

 

さて、いろんな文脈で人生は旅に例えられることが多いですが、それでは私たちはなぜ旅に出かけるのでしょうか。

観光名所を訪れるため。

遠く離れた友人に会うため。

ご当地の美味しいものを楽しみに。

ゆっくりと気分転換に。

・・・ええ、少し考えただけでも、たくさんの旅の目的がありますね。

以前、私はその中の上3つの目的でよく旅に出かけていました。あの名勝を見るために、ついでにそこの美味しいものを食べよう、または久しく会っていないあの人に会うために・・・というように。

そうした目的のある旅というのは、他の娯楽と大きく変わりません。話題の映画を観に行く、とても美味しいと聞いたレストランを訪れる、友人とカラオケやボーリングを楽しむ、読みたかった小説を一気読みする、お気に入りのショップでアクセサリーを買う、エステを楽しむ・・・

こうした行動と旅が決定的に違うのは、旅はそれ自体が目的となりうることのように思えます。明確な目的はなくても、旅に出ること自体が目的になり得ます。

目的のない行為、それは「豊かさ」の象徴です。

 

ともすれば私たちは「~~するために」という目的がないと、何かをすることに許可が出せません。しかも、「~~」に入る言の葉は、学び、人脈、仕事、経験とか、分かりやすい大義名分がよく入りますね。

どんな優秀な方でも、どんな資産を持っていても、どんなイケメンでも、1日24時間という縛りから逃れることはできません。だからこそ、その貴重な時間の使い方に目的をつけたくなるのですが、逆から見ればその貴重な時間を目的のない(=それ自体が目的の)旅行などに充てることができるのは、最高にぜいたくで豊かなことのように思えます。

これは旅に限った話ではないのですが、私たちの生きる豊かさとは、どれだけ無駄と思える余白の時間を持てるか、に依っていると思うのです。それは、外的な基準や物質的な所有の多寡とは、あまり関係がありません。余白に、ブランクにこそ豊かさは宿り、人の心を満たします。

 

旅は、人生を豊かにしてくれるようです。

今日もお越しくださいまして、ありがとうございました。

どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。