旧い友人というのは、いいものですよね。
どれだけ長い間会っていなかったとしても、すぐにその当時に戻ることができます。
それまでの期間にお互いがそれぞれにたくさんのことをがあって、いろんなことにぶつかり、経験して、さまざまなことを考えたりして、再会を迎えたとしても、再会した瞬間にそれらは一瞬で溶けて、よく会って話していた当時に戻ることができます。
不思議ですね。
ある一時期を一緒に過ごして、泣いたり笑ったりした経験というのは、まるで宝石箱のように心の深いところにしまわれているようです。
今日はそんな旧友についてのテーマを。
私の通っていた高校は、当時多くの生徒がJRと地下鉄を利用して通学していた。私はというと、私鉄と地下鉄で通っており、少数派だった。
だからだとうか、同じ私鉄組のその方とは電車を待ちながらよく話をした。同じ部活の帰り途、ターミナル駅のホームで何本も赤い電車を見送りながら延々と。
どんな話をしたのか、おぼろげにも思い出せないけれど、楽しかった。私がそう思っているだけかもしれないが、凸凹が合っていたように思う。
新しいものを見つける、引っ張っていくのはその方のリーダーシップ。
それに興味を示しニコニコ喜び、深めていく私のフォロワーシップ。
その方から紹介されて私が当時ハマったものは多々ある。漫画「沈黙の艦隊」、料理、テレビゲーム「バイオハザード」、そして麻雀など。
シャープな理系のその方の思考と、情緒的な私の思考も凸凹。
「この問いの数式の解法が美しいんだよ」
数1ですでに沈没して以来の消極的文系だった私からすれば、今なら金髪インテリヤクザ風の芸人の相方の台詞を借りて
「ちょっと何言ってるか分からないです」
と答えるだろうと思う。
今日もそのシャープな思考とリーダーシップで、新しいものをつくりだす仕事に勤しんでいるのだろうか。
私の方は煮詰まると、その方の下宿先の近くにあった日帰り温泉に、移動カラオケ屋を兼ねたドライブにひとり出かける。
私が訪ねて行ったら大雪が降り、腰まで積もった雪をかき分け温泉に浸かった後、男二人で棒棒鶏を自炊した、あの古き良き日を思い出しながら。
2017.6.1
写真の温泉は長野県松本市・浅間温泉にあります「琵琶の湯」です。
今から約400年前に松本城のお殿さまが整備され、長い歴史を刻んできた湯殿です。以前は旅館としても宿泊もできた時期もあったそうですが、現在は日帰り温泉として営業されておられます。お殿さまお手植えの松の木が迎えてくれたり、お殿さまの野天風呂があったり、風情があって楽しめます。
名古屋からですと、中央道で約3時間半。移動カラオケをして、もの思いにふけるにはちょうどいい距離なんです。そして温泉にゆっくり浸かって、緩んで。そして帰りには、市内の蕎麦屋さんで軽くざるそばなどを楽しんで。ただ車で行くと、湯上りに一杯飲めないのだけが残念ではありますが・・・
今日の言葉とは関係ないのですが、女性は人に話すことで自分の考えや気持ちを整理して、男性は一人になることでそれをする、とよく言われます。だからお互いを理解するのは難しくも面白いのでしょうね。私が前回訪れたのは夏で、野天風呂に浸かりながらぼーっと長いこと蝉の声を聴いていました。やはり私も例に漏れず、そういう一人になる時間が必要なのでしょう。
さて、その方は高校からの友人です。
卒業後に松本で下宿をされていたので、何度か訪ねて行きました。冬に訪ねて行ったところ、松本の雪の深さと寒さに往生して温泉の湯で生き返ったことや、棒棒鶏をつくる際に茹でた鶏肉の熱さに軽く火傷しながら割いたことを覚えています。旧き良き日々、今となってはとても良い想い出です。
なぜかウマが合う。そういう友人は、いますよね。
それは、その人と自分とが凸凹だからなのかもしれません。
リーダーシップとフォロワーシップ。
大胆さと慎重さ。
話し手と聞き手。
ポジティブとネガティブ。
人は往々にして自分にないものに惹かれ、また憧れますが、その周りの人の魅力を輝かせているのは、実のところ自分の魅力なのかもしれません。
考えてみれば当たり前なのですが、
一人ではリーダーになれません。
バランスを欠いた大胆さと慎重さは、蛮勇と臆病です。
聞き手がいてこそ、トークショーが成立します。
ポジとネガは陰と陽、片方だけでは存在しません。
私もそうなのですが、どこかで周りの人の魅力を「ほえー、すっごい」と見上げてしまう癖があります。でもちょっと見方を変えてみると、周りのその人の魅力を輝かせているのは、本人そのもの、なんですよね。
夜空に浮かぶ美しい月も、実は裏側から光を当てている太陽があってこそ。
たまには少し見方を変えて、周りの人の魅力を輝かせているのは、私自身だと見てみるのもいいのかもしれません。
さてお客さまが旧き良き日々を一緒に過ごされた友人の方は、どんな魅力のある方でしょうか。もしかしたらその魅力を輝かせていたのは、お客さま自身かもしれません。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。