昨日からの群馬紀行の中で、今日のタイトルの名言を実感したお話を。
群馬で一仕事を終えたあとは、別部署の方と合流して車での帰途でした。
午後4時過ぎに高崎を出て、愛知県へ帰ります。
群馬から愛知へのルートは、主に長野県の山道を走る中央道と、南下して八王子を経由して新東名で帰るルートがあります。
折しも世間は夏休み。
新東名の交通量の多さと事故渋滞を恐れ、中央道で帰ることにします。
1時間半ほど走り、長野県の中腹に差し掛かったあたり。
休憩を取るため、梓川サービスエリアに入ることになりました。
別部署の方はスモーカーなので、喫煙所で一服。
そういえば、私が煙草をやめて一年以上が経つな、と感慨深くなります。
酒席で電子タバコとやらを味見させてもらうことくらいはありましたが、再開せずに今日まで来られています。
煙草をやめると、こういう休憩のときに甘いものが食べたくなります。
甘党や辛党など、いろんな党があるのですが、私は酒も飲むしつまみも好きだし、甘いものも好きです。
まあ、要はなんでも美味しくて節操がないということなのでしょう。
夕方5時台にもかかわらず、まだ蒸し暑い熱気がサービスエリアを覆っています。
となると、アレしかありません。
ええ、ソフトクリームです。
全く脈絡のない話なのですが、アイスやソフトが最もよく売れる気温というのは25度から30度くらいのレンジだそうです。
しかし30度を超えると途端に売れ行きが鈍ります。
その気温では、冷たい飲料やカキ氷の方がよく売れるようになります。
車の外気温の表示は、やはり29度。
以前に聞いたそんな話の正しさを実感します。
ソフト、ソフト…
頭の中がソフトだらけになった私は、サービスエリアのオアシスを探しました。
しかし、ほどなくして見つけたあのオブジェを、何とお店の方が仕舞おうとしているではありませんか!
駐車場に面した窓は閉められ、「閉店」の掛札が。
あの、ソフト…な、ないですかね…
私は閉店作業をしていたお店の方に消え入りそうな声で尋ねました。
お店の方には、きっとソフトゾンビのように見えたことでしょう。
あー、ここはもう閉店なんで。
ただ、中のイートインにありますので、食券を買ってください。
なんと!
地獄に仏、地獄から天国。
炎天下にビール。
私は意気揚々とイートインスペースの食券を買い求め、ドヤ顔で店員の方に渡したのです。
おそらく、今日イチのワクワクとともに。
手際よくソフトを巻く店員の方。
差し出されたソフトを受け取り、私は夏の夕暮れに映えるフォトジェニックなソフトを撮りたく、いそいそとお店の外へと歩いていきました…
わたし、しらなかったんです。
まなつのソフトが、あんなにゆるいなんて。
ええ、私の幸福の象徴は、横滑りしていきました。
コーンの内部だけを残して、ゆっくりとソフトの塊は床にダイブしていきました。
一流のアスリートが極限まで集中したときや、生死に関わる場面では、周りの風景がスローモーションになる、とよく言われます。
俗に言われる「ゾーン」という領域ですね。
ええ、私もそのとき「ゾーン」に入ってました。
だって、とてもゆっくりと床に落ちるソフトを見たのですから。
…あとは敗戦処理です。
ティッシュを集め、ソフト(だった物体)をかき集め、涙ながらに別れを告げる。
そして汚れた床を掃除しようと、お店に雑巾を借りに行きました。
…雑巾、かして、ください…
ほんの数十秒前にソフトを巻いていたあのいかつい男性の店員は、私の「ハ」の字の眉とあるべき部分がないコーンを見て全て悟ったのでしょう。
…はい、雑巾。そんで、そのコーンこっちへ。左手のつきあたりに水道があるから、そこで手を洗って。
その男性は面倒臭そうな仕草をしながらも、どこか嬉しそうではありませんか!
手を洗いながらその男性を見ていると、
「もうっ!仕方ないんだからッ!」
というような台詞を喋るツンデレ娘に見えてきたのは、私が暑さで頭をやられていたのではないと思われます。
…はい、これ。まっすぐ気をつけて持たないとダメだよ。
そう言って新しいソフトを渡してくれた男性に、私は深々とお礼を言って、懲りずにフォトジェニックにこだわって外へいそいそと歩いていくのでした。
とてもよく陥る錯覚なのですが、私たちは愛されようとして完璧を目指します。
あれもこれも、他人から見て完璧にしていれば、愛されるだろう。
それは過去に素の自分を出して愛されなかったという悲しい記憶からくる防衛本能なのですが、残念ながら真実ではありません。
ベストセラー作家のひすいこたろう さんの言葉に、
人は長所で尊敬され、
短所で愛される
という名言があります。
とても深い真実を捉えており、私の好きな言の葉の一つです。
欠点、というのは、欠けている点。
空いているとことに、周りの人は惹きつけられるのです。
自分が短所や欠点、失敗をさらけ出すことは、周りにとって恩恵です。
だって、手を貸したり、力になったり、頼りにされたりすることができるのですから。
そう、いかつい風貌なのにツンデレ娘のようなあの店員のように。
そして、その助けてもらったことに対して、「ありがとう」という最強の癒しの言葉を伝えることができるのです。
そんな循環がたくさんある人生、それは豊かな人生と言えるのではないでしょうか。
梓川サービスエリアのイートインの男性の店員さま。
おかげでとても暖かな気持ちになれました。
どうもありがとうございました。
二度目のバニラ&チョコレートソフト。
夏空の夕暮れとともに。
とてもおいしゅうございました。