先日、CHIE'S KITCHEN(チエズキッチン)さん主催の「京都宮津の逸品 飯尾醸造様に学ぶお酢料理教室」に参加してきました。
今回、飯尾醸造さんのお酢を使った料理教室が名古屋で開催されることをSNSで拝見して、参加をさせて頂きました。
今日はその見聞録を。
- 1.「好き」で満たされた、明るいKITCHEN
- 2.日本で唯一無二の、お酢やさん
- 3.手巻キングによる「テマパ」講座
- 4.使命感、ロジカルシンキング、聖人(セイント)性
- 5.おわりに ~人が笑顔になるお酢、笑顔をつなぐKITCHEN
1.「好き」で満たされた、明るいKITCHEN
今回、この口座を主催されたCHIE'S KITCHENさんは、名古屋で「内側からキレイになる理論と料理を学べる」料理教室(クッキングスタジオ)を主催しておられます。
私はその料理教室に参加させて頂いたことはなかったのですが、今回愛用している飯尾醸造さんのお酢を使った講座ということで、申し込みをさせて頂きました。
とはいえ、私のような中年の男性が「仕事終わりに初めての料理教室に参加する」というのは、なかなかにハードルが高く、緊張しながら地下鉄の高岳駅から会場への道を歩いていきました。
案内いただいたメールに記載の住所のビルに着き、エレベーターで3階のCHIE'S KITCHENさんのスタジオに向かいます。
どきがムネムネしながらその扉を開けると、とても明るい空間が広がっていました。
その明るさは、照明の明るさだけではないように思えました。
これから始まる教室のいろいろと準備をされている中でも、スタジオの中には笑顔があふれ、これから楽しい時間が始まることを予感させてくれます。
そんな、美味しい食を通じて、好きなこと、楽しいことで満たされている空間。
そんな雰囲気が、感じられました。
受付を済ませ、参加者の方が増えてくると、その楽しい空気はさらに増幅されるようでした。
あぁ、素敵な空気だな。
やっぱり好きなことをするとき、人は笑顔になって、いいエネルギーが出るんだな。
この気持ちのいい雰囲気は、それを積み重ねてこられた結晶のようなものなのだろうか。
スタジオに満ちる明るい空気に触れさせて頂いたことで、初めて参加する緊張が少しほぐれながら講義が始まるのを待つ時間は、とても心地よいものでした。
2.日本で唯一無二の、お酢やさん
飯尾醸造さんは、以前から折に触れてここでも紹介させて頂いているが、京都は宮津市のお酢やさんで、米作りから一貫した素晴らしいお酢の製造を行っておられるます。
富士酢、手巻き寿司酢、ゆずぽん酢、紅芋酢、ピクル酢、しゃぶしゃぶに夢中・・・どれも唯一無二の素晴らしいお酢たちで、私も愛用させて頂いています。
今回は五代目当主・飯尾彰浩さんがお酢についての講義、そして手巻き寿司の極意をお話いただけるということで、楽しみに参加させて頂きました。
飯尾醸造さんは、「お酢」をつくる過程において、「米づくり」→「酒造り」→「お酢づくり」までを自社で一貫して携わっておられる日本で唯一のお酢やさんです。
三代目の代から「無農薬のお米」でのお酢づくりに取り組まれ、その無農薬米を丹後の美しい棚田で、契約農家さんと一緒になってつくっておれらます。
日本人の誰の心にも宿る原初風景のような、丹後の美しい棚田。
この棚田は、飯尾醸造さんが自社で管理しておられる棚田で、作業をされているのも飯尾醸造さんの社員の方です。
今回ご説明頂いた飯尾彰浩さんは、15年ほど前からこの米作りの「田植え」と「稲刈り」の体験会を自社の顧客向けに開催されており、今では全国からのべ200名以上の富士酢ファンが参加されるイベントとなっておられる。
写真は、私もその体験会に参加させていただいたときの美しい一枚。
5代目、飯尾彰浩さんと。
「エンドユーザー」と「つくり手」をつなぐ。
「共犯者」をつくる。
「広告」をエンタメにする。
2019年の現在においては「当たり前」になってきたことを、もう15年も前から飯尾さんは始められていたことに、先見の明を感じずにはいられません。
そんな飯尾醸造さんのお酢の中で、もっとも製品になるまでに時間のかかるのが、今回の教室の中で使う「富士手巻きすし酢」。
酒粕を10年以上寝かせてつくった赤酢と、2種類の米酢をあわせてつくるため、米作りから数えると製品になるまで15年(!)もの歳月を要するそうです。
3.手巻キングによる「テマパ」講座
講義は、「お米」からつくられる発酵食品がどのようにしてつくられるのか、という説明から始まりました。
ふだん何気なく口にしている「お酢」「日本酒」「みりん」「ヌカ漬け」などといった発酵食品が、どのようにしてつくられているのか、詳しい説明を発酵のプロから聞ける機会というのは、なかなかないように思います。
「玄米」をスタートとしてつくられる「ヌカ漬け」「熟れ寿司」「麹」「日本酒」「甘酒」「みりん」「焼酎」「泡盛」「米酢」「赤酢」といった食品は、「糖化」「アルコール発酵」「乳酸発酵」「酢酸発酵」という過程を組み合わせて発酵食品はつくられます。
その「米の発酵マップ」を見ていると、普段口にしているお米や発酵食品が、とんでもない先人の経験と知恵と、そしてそれをつくる人の手間からできているんだなぁ、と再認識させられます。ありがたや。
その後、上に書かせて頂いた飯尾醸造さんのお酢づくりについて、ご説明をいただきました。
そして、講座の最後は、そんな「富士手巻きすし酢」を使った手巻き寿司について。
実は飯尾彰浩さんは「手巻キング」として、
「手巻き寿司を使ったパーティー」=「テマパ」
の伝道師でもあります。
これまで「テマパ」講座を受講した方は延べ4,000人を超え、国内のみならず海外でも「テマパ」のすばらしさを伝える活動を広げておられます。
遊びを仕事にする、仕事になるまで遊ぶ。
まさに現代的な仕事のつくり方。
手巻キングの講義を受けると頂ける、「テマパ完全マニュアル」。
酢飯の炊き方から、具材の選定、会場のセッティングの仕方、「テマパ」への想い、そして「人生の大切なことは、すべてテマパで学べる」と手巻キングが仰るとおり、「おもてなし」の本質がウィットとユーモアを交えて書かれています。
炊いた白米から「富士手巻きすし酢」を使って酢飯をつくるところを、手巻キングが実演されて、その酢飯の切り方の所作の美しさにほれぼれします。
その後は、全員で準備をしてお楽しみの「テマパ」がスタート。
スタッフの皆さまが準備頂いた具材は、
- 高野豆腐のベジツナディップ
- 厚揚げとマッシュルームのカレー照り焼き
- 醤油漬けきのこ
- 春菊ジェノベーゼソース
- 味噌ごまだれ
- 紅芋酢でつくるいちご果実酢
という豪華な品揃え。
これに納豆や梅肉、あわせ味噌、大根や大葉、レモンなどの生野菜が加わります。
さらに、飯尾醸造さんのレシピから
まで準備されていてボリュームも満点の食卓に、笑顔がほころびます。
手巻キングがつくった酢飯が盛り付けられて、いただきます!
全員で美味しい手巻き寿司を堪能します。
蟹を食べるとみんな無言になる、と言いますが、それに近しいものがありました。
みんな、各々思い思いの具材の組み合わせを試しながら、海苔を巻いていきます。
口に含むと、みんな一様に「んー、美味しい!」と笑顔がはじけます。
美味しいものを囲んで、手巻き寿司を巻くことは、人と人の距離を縮め、心を温かくするように感じました。
ごちそうさまでした。
4.使命感、ロジカルシンキング、聖人(セイント)性
さて、こうした発酵食品について、お酢について、「テマパ」についてを語る飯尾醸造さんの5代目・飯尾彰浩さんを見ていると、ある種の「使命感」「ロジカルシンキング」「聖人(セイント)性」といったものを感じました。
人が何か行動をする動機となるのは、「好き」「愛」「情熱」といったポジティブなものから、「怖れ」「自己否定」「寂しさ」といったネガティブなものもあります。
けれど、何十回、何百回と発酵食品について、お酢について、富士酢についての同じ話をされているであろう飯尾さんですが、まったくそれについて「飽きて」いないように感じるのです。
それは、「好き」や「嫌い」というものを越えた「使命感」としか表現のしようがないもののように感じます。
「使命感」と書くと、大層な感じがしたり、悲壮感が感じられたりするかもしれませんが、まったくそのような感じではなく、「私が私だから、それをやっている」というように感じるのです。
そして、その講義の分かりやすさを支える「ロジカルシンキング」。
受け継がれてきた製品がどのようにしてつくられているのか。
自社の製品の強みは何なのか。
顧客の手に届くまでをどうデザインするのか。
そうした一つ一つの問いに対して答えるため、ロジカルにすべての事象を分解し、打つ手は何なのか、何を語るべきなのか、を明確にされておられる。
だから、説明が端的で分かりやすい。
いつもロジックよりも感情に流れてしまう私からすると、うらやまし限りです。
こうした「ロジカルシンキング」は、前述した「使命感」を全うするための、大きな武器になっておられるように感じました。
そして最後に、「聖人(セイント)性」。
人が何がしかの情報を訴求しようとする場合、どうしても訴求する相手の「数」というものが意識の中に入ってしまいます。
多くの人に訴えたい、告知したい、宣伝したい。
そう考えるのが、自然です。
ところが、飯尾さんはそのような「マス」に訴える1対nの活動だけでなく、このような一人一人の参加者の顔が見える1対1のコミュニケーションを大切にされておられる。
前述した田植え体験会も、そのような思想のともに企画されているように感じます。
ここに、人を魅了する秘訣が隠されているように思います。
要は、どの時代でも愛される普遍的なコミュニケーションを大切にされている、ということなのでしょう。
そこに、私は「聖人(セイント)性」とも呼ぶべき印象を受けました。
「マス」に対する訴求も、もちろん大切です。
けれども、ほんとうにその製品やサービスを愛してくれる顧客に向けて訴え、宣伝するることを考えたとき、たった一人に向けて語ること大切なように感じるのです(言葉は悪いですが、選挙でも最後にモノを言うのは「ドブ板営業」と聞きます)。
講義の中で、飯尾さんはどの参加者の方とも、目線を合わせてお話をされているのが非常に印象的で、偉ぶるとか着飾るとかは全くなく、自然体でお話をされていました。
「マス」に対する我欲から解き放たれ自由になっているように見えるその姿は、「聖人(セイント)性」と呼びたくなるものでした。
製品やサービスの広告とは、訴求とは、宣伝とは・・・いろんな面で、考えさせられる飯尾さんのお話でした。
5.おわりに ~人が笑顔になるお酢、笑顔をつなぐKITCHEN
緊張の中、初めて参加させて頂いた料理教室でしたが、このように盛りだくさんであっという間の時間でした。
人を笑顔にするお酢。
そして人と人の笑顔をつなぐKITCHEN。
その両方が、とても幸せな空間をつくりだしてくださって、楽しく美味しい時間を過ごさせて頂きました。
CHIE'S KITCHENさん、
飯尾醸造さん、
どうもありがとうございました!