葉桜が、好きだ。
満開の桜もいいけれど、葉桜が好きだ。
今年は4月に入っても寒さが戻ってきたことで、桜が咲いている期間は長かったように感じた。
けれど、散り始めたピンクの桜と新緑の緑が一緒の画面で見られる時間が、少なかったように思う。
やはり散り始めると、あの無数のピンクの花びらは潔く一瞬で散っていくようだ。
それでも、今日は近所の公園で春の忘れものを見つけた。
葉桜。
長い冬を越えて淡いピンクの色を世界に与える季節と、
生命力を最も感じる緑と風の季節。
始まりと、終わりが集う場所。
それがずっと私の心をとらえて離さないのは、なぜだろう。
最中や渦中よりも、その境界線。
何かが起こる前と、起こった後。
その境目にこそ、神は宿る。
夜、眠りにつく瞬間。
太陽が、地平線にその姿を隠す瞬間。
何かに向かって、歩き出す瞬間。
美味しいランチが、始まる瞬間。
朝、目覚める瞬間。
行く、と決める瞬間。
瞑想を終えて、目を開ける瞬間。
土に還る、その瞬間。
その刹那の、どちらでもない瞬間。
それこそが、いま、ここ、なのかもしれない。
その瞬間を、愛でようと思う。
葉桜が、好きだ。