押し入れや収納棚の中、あるいはベッドの下といった、普段は「見えない場所」と、「潜在意識」はつながっているらしい。
ニワトリが先か、卵が先かの話ではあるが、
心の深い部分がクリアになると、見えない場所を綺麗にしたくなるし、
その逆に見えない場所を綺麗にすると、不思議と心が落ち着く。
そして、その合図になるが「不快なできごと」なのかもしれない。
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ある日の早朝、起き抜けに娘がトランプを持ってきた。
最近覚えたらしい「スピード」を一緒にやろう、と。
私も小さい頃に遊んだ記憶のある、反射神経と手先を使うゲームだ。
起きてリビングに行くのも面倒だったので、そのままベッドの上で何回か「スピード」で勝負して、そのまま「しちならべ」「ババぬき」などを続けて遊んだ。
次は「しんけいすいじゃく」をやろう、と言ってトランプすべてをベッドの上で広げだした娘。
しかし、娘の身体の重みで傾斜がついていたのか、壁とベッドの間にトランプがバラバラバラ…と落ちていってしまった。
娘は「あぁ、やっちゃった(テヘペロ)」という表情をして、「おとうさん、ひろっておいて」と言い残し、そのままベッドから逃げていった。
まったく、朝早く起こしておいて、面倒な仕事を増やすものだと少々イラっとする。
それでも、気を取り直してトランプを取ろうとベッドを少し動かすと、床にはホコリがたまっており、トランプを取りに手を伸ばすのが躊躇われた。
そういえば、しばらく掃除していなかったな…と思い、面倒なことこの上ないが、仕方なく朝食の後にベッドを大々的に動かして掃除機と雑巾をかける。
想像していた以上にホコリはたまっていて、ついでにベッドの他の家具もどかして掃除機をかけ、雑巾で床を拭く。
ずいぶんと床も経年変化で汚れていたようだが、雑巾で拭いて綺麗になっていくのが気持ちいい。
掃除機にたまったホコリを捨てる時には、びっくりするくらいの大きな塊になっていた。
大移動した家具も乾拭きしてエンヤコラと戻し、ようやくもとの配置に戻るまでに、小一時間はかかってしまっていた。
けれど、見かけは変わらないはずのその部屋にいると、不思議と気分がスッキリとした。
居心地がよく、この部屋で眠るのが楽しみになった。
早朝から起こしてくれた上に、面倒なことを押し付けてきた娘にイラっとしたが、それは掃除させてくれるサインだったのかもしれないなと思った。
かくいう娘は、トランプのことなど気にも留めておらず、塗り絵にいそしんでいたのだが。
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見えないところを掃除したり整理したりすると、心の深い部分がクリアになる。
気分がスッキリしたり、心地よくなったり、何か入れ替わったような気分になる。
あるいは、
何か心のモヤが晴れると、妙に押入れや収納の中なんかが気になる。
掃除をして、要らないものを捨てたりして、物理的に身軽になる。
ニワトリが先なのか、卵が先なのか。
どちらも、正しいのだろう。
ただ、一つ言えるのは、そうした時期を教えてくれるサインは、「不快な感じ」や「痛み」といったネガティブなものであることが多い。
トランプをベッドと壁の隙間に落としされて、「イラッ」とした感情を覚えたように。
不快な思いをしたり、心に痛みを覚えたりする出来事が起こるという事は、見えないところの掃除をするタイミングなのかもしれない。
それは、しばらく開けていなかった押し入れかもしれないし、
凝り固まった思考などのクセなのかもしれない。
小さな先生は、いつもいろんなことを教えてくれる。