時に霜月。
朝晩の空気の冷たさが、染みるようになってきた。
見上げれば、陽の光の透明感が増した。
空気が冷えて、澄んできたのか。
もう来週には、暦の上では冬が始まる。
その名の通り、霜が降りるのも近いのだろう。
あれは、小学生何年生のころだったのだろう。
集団登校の待ち合わせ場所で、地面の霜をばりばりと踏んで
出発まで待っていた私を思い出す。
手袋をしていたような気がするから、
真冬の記憶だったのかもしれない。
手袋も、マフラーも、なぜか嫌いな私だった。
あの待ち合わせ場所になっていた繊維工場の社宅は、
いまはもう綺麗なマンションになって、
あの地面もコンクリートの駐車場になっている。
赤い色が、目に留まった。
紅葉。
紅い、葉。
これから冬に向かうのに、
なぜこんなにも燃えるような色をしているのだろう。
もしかしたら、
一番、澄んで綺麗な時節だからなのかもしれない。
たしかに、真夏の盛りに、この紅さは合わない気がする。
夏は紺碧、群青、インディゴブルー。
時に霜月。
紅い、霜月。