前日に、久しぶりに雪が舞った。
夕方から降り始めたそれは、少し止んだりもしていたが、夜には牡丹雪になった。
昨年末に一度降ったが、それ以来だと思った。
最近は暖冬が続いたせいか、あまり雪を見ない冬が続いていたが、この冬はそうでもないようだ。
故郷で暮らしていたころ、ひと冬の間に、必ず一度か二度は雪だるまが作れるくらいの積雪があったように覚えている。
雪の冷たさにかじかんで、真っ赤になった手。
綿の手袋はびしょびしょに濡れて、すぐに戦力外になるのが常だった。
朝起きると、まだ日陰には雪が残っていた。
幼い私のように、向かいの家の子どもたちが、少ない雪を集めて何かを作ろうとしている。
雪だるまか、それとも何か別の制作物か。
幼い私と同じように、手袋をしていなかった。
川沿いの花も、雪の冷たさに耐え。
雪、というものは不思議だ。
見慣れた景色を、その白さで一変させる。
それはどこか、包み込むような。
寒さと冷たさの中に、優しさと純白と。
山茶花もまた、冷たい雪とともに。
紅い花弁と、白い雪。
その対比が、美しく。
古来より、多くの画人が雪と花を描いてきたのも、頷ける。
春を待つ梅の木にも、雪は積もり。
耐雪梅花麗。
かの有名な、西郷隆盛の言が想起される。
ゆきにたえて。
確かに耐えているようにも見えるが、梅は雪とともにあるようにも見える。
空は青く、白い雪は一層映える。
時に大寒なれど、吹く風の中には、かすかに暖かな気配を含んでいた。
三寒四温。
寒くなり、時に雪も降りながらも、暖かな春もまた、やってくる。
季節は流れ、深まっていく。
そのままに。