今日は「大寒」、一年で最も寒さが厳しい時候。
例年のこの時期の朝は、極寒の中で車のフロントガラスの氷を溶かすという苦行に勤しむのだが、今年はまだ1回しか、その苦行をしていない。
底冷えする寒さを感じる前に、冬が終わってしまいそうだ。
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とはいえ。
寒さ、というのは、あまりにもそれが過ぎると痛みになる。
それを知っているから、みな寒風には首をすくめ、身を固くする。
いつしかそれは、世界と自分を隔てる薄い膜となり、いつしか皮となり、そして身を護る硬い鎧となる。
その膜を、皮を、鎧を、何重にも着重ねて。
痛みを感じないように、厄災から身を隠すように、信じたくない現実を見ないで済むように。
凍える大寒の冷気から、やわらかな新芽を護るために。
そのために着重ねた、鎧。
それを、思い込みや信念、ブロックと呼ぶこともできるし、
愛
と呼ぶこともできよう。
いつしか、その鎧は、誰がつくったのか、何のためにつくったのか、忘れ去られる。
ただ、それがあることの方が自然なように。
それでも、大寒を過ぎれば春立てる日がやってくるように、季節はめぐる。
いつしか、世界は暖かく、そしてやさしい場所に変わる。
そう、もう鎧を着ていては、汗ばむ陽気だ。
風はやさしく、陽の光はやわらかで、空にはぼんやりと霞がかかる。
その空へと、鎧を返すときが来る。
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いままで、わたしを守ってくれて、ありがとう。
あなたのおかげで、わたしはずっと守られてきました。
でも、もう大丈夫。
自分で歩いて行ける。
大丈夫、世界はやさしくて、
そして、美しいから。
今まで、ありがとう。
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大寒を過ぎると、すぐに春立てる日へ。
世界は、またやさしくなる。
またいつか、寒さが戻ってきて、膜を、皮を、鎧をつくっても。
もう、大丈夫。
季節はめぐり、世界はまた美しくなるから。
硬く厚い鎧に守られている新芽。その硬さは、どこか健気で。