滋賀県大津市は近江神宮を訪れた。
名古屋から車で約2時間ほど。
大津インターを降りて、琵琶湖沿いに北上する。
訪れるたびに感じるのだが、滋賀県のこのあたりは「初見殺し」の道が多い。
特に路面電車と並行して走る道や、可変式の中央分離帯など、ナビがないと厳しい道が多いように感じる。
それはともかく、冬晴れの心地よい朝だった。
駐車場からすぐの、二の鳥居を望む。
冬至の迎えてすぐの、陽の光がやさしい。
境内には、まだこんな見事な色の紅葉が残っていた。
師走の寒気のなか、どこかぼんやりとした忘れ物のような。
歌人・春田真木子の歌碑。
人間の 知恵のはじめよ ひそひそと
秘色の水に 刻まあたらし
境内の漏刻に感銘を受け、水と時間に想いをめぐらせた歌とのこと。
楼門を望む。
近江神宮の創建は1940年(昭和15年)。
大津市は飛鳥時代に、天智天皇が近江大津宮に都をおかれたことからその発展がはじまったとされ、天智天皇への崇拝が篤かったそうだ。
明治以降、大津宮跡に天智天皇奉祀神社の創立を熱望する請願運動が起こり、昭和15年に創建されたと聞く。
悠久の歴史に想いを馳せながら、楼門をくぐる。
あらためて、心地のいい冬の朝だった。
前週に12月にしては珍しい大雪が降ったこともあり、道中のことなどいろいろ気を揉んだりしたが、杞憂に終わってよかった。
静かな境内。
玉砂利の音に耳を澄ませながら。
拝殿から楼門を望む。
思ったよりも、登ってきたようだった。
暖かい日差しの中にも、凛とした空気が、冬らしく。
ご祭神の天智天皇は、大化の改新を断行され、都を奈良の飛鳥から近江大津宮へ遷し、「近江令」を制定するなど、国家としての礎を築かれた。
また、漏刻(水時計)をお造りになり、時報をはじめたことで「時の祖神」とも称され、時計メーカーをはじめとする関係者から篤く敬われているそうだ。
境内にも、ロレックス社やオメガ社といった、有名時計メーカーから寄贈となる日時計などが設置されていた。
社会生活の礎となる、「時間」の概念。
それは古人たちの英知が詰まった、贈り物なのかもしれない。
もう一度、楼門を見上げながら。
少し、陽が高くなったようだった。
時は流れを止めず、滔々と過ぎゆく。
境内からわずかに見える、琵琶湖の青。
その東の方角を眺めながら、私はしばし、時の流れに想いを馳せた。