大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー見習い。

控えなさい。 ~2021年 ヴィクトリアマイル 回顧

春のマイル女王決定戦、ヴィクトリアマイル。

昨年はアーモンドアイが、圧巻の走りでGⅠ6勝目をマークしたのは記憶に新しい。

心配された空模様も、なんとかレース時間まで降らずにいたようで、良馬場での開催となった。

 

ゲートが開き、リアアメリアが1馬身ほどで遅れる。

前に行きたい馬が揃ったメンバー構成の中、ハナを切ったのは斎藤新騎手のクリスティ。番手に柴田大知騎手のスマイルカナは番手に控え、さらにそれを酒井学騎手のイベリスが見る形。

大外から発進の武豊騎手とレシステンシアも先行集団に、和田竜二騎手のシゲルピンクダイヤも前目からの積極的な競馬。

 

圧倒的な1番人気を集めたクリストフ・ルメール騎手とグランアレグリアは、ちょうど中団あたりで、前に戸崎圭太騎手のマジックキャッスルを置く形。3番人気のテルツェットとミルコ・デムーロ騎手は、そのさらに後方から。

隊列が決まってからは淡々と流れ、クリスティと斎藤騎手が刻んだラップは、前半の半マイルが46秒ジャストあたり。GⅠとしては、ややスローな落ち着いた流れか。

 

大きな動きのないまま、4コーナーを回って直線へ。

先頭はクリスティとスマイルカナ、それにレシステンシアが並びかけていく。さらには吉田隼人騎手のランブリングアレー、さらにはマジックキャッスルが中団から差していく。

グランアレグリアは不利のない大外へ進路を取り、泰然と脚を伸ばす。

 

残り200m地点でまだノーステッキでも、脚色は違っていた。ようやくルメール騎手は、軽く右鞭を打つ。

 

あとは、一人旅。

1分31秒ジャストの好時計で、2着に4馬身の大差をつけてグランアレグリア圧勝、GⅠ5勝目を飾った。

大接戦の2着争いを制したのはランブリングアレー、そして3着にマジックキャッスルが入線した。

 

 

1着、グランアレグリア。

前走、3階級制覇を狙ったGⅠ大阪杯では4着に惜敗、そこから見事に巻き返した。母系に入っているSeatleSlewに代表される米血統は、調子がいいときはいいが、いったん不調期に入ると長く低迷するイメージがあるのだが、この馬にはそんな心配も杞憂だった。

 

前年、短距離GⅠを3勝したその脚力は、やはり伊達ではなかった。あのアーモンドアイをねじ伏せたことのある同馬からすると、ここでは格が違ったか。4馬身差をつけた2着から、8着まですべてクビ差という結果が、今回の出走馬の格を端的に示しているようだった。

 

ルメール騎手は先週のNHKマイルカップに続いて、2週連続のGⅠ制覇。外枠に行き脚の速い先行馬がいる6番枠という、多少注文のつくスタートだったが、無理なく中団につける位置取り。

先週は直線少しタメてからの追い出しだったが、今日は外を回して、素直に追い出す形。相手との力関係から、不利のない外を回れば、結果はついてくるだろうという判断だったか。

折しも当日の9レースでは史上最速でJRA通算1400勝を達成し、その手腕は冴え渡るばかりである。

 

それにしても、同馬の3歳時のGⅡ阪神カップで見せた末脚は出色だったが、こと短距離の切れ味はすさまじい。トップギアにいたるまでの加速力は、歴史的名馬のそれに比するようにも見える。

レースセンスや器量のよさで勝ちを重ねる馬と、化け物じみた脚力で勝つ馬の2種類があるとして、同馬は後者のように感じる。ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴル、アーモンドアイ…そんな「脚力お化け」たちの系譜に、重ねたくなる走りだった。

 

この先、また短距離路線を席巻するのか。

それととも、中距離路線に再度挑戦するのか。

いずれにせよ、その走りを楽しみにしたい。

 

2着、ランブリングアレー。

勝ち馬の後ろから追走し、その勝ち馬が抜け出したコースを通って、うまく差してきた。

スタート後のポジション取り、4コーナーを回ってからの進路選択など、吉田隼人騎手の手綱さばきが光った。

今年に入ってGⅢ愛知杯2着、そして前走GⅢ中山牝馬ステークス1着と、充実期に入ったか。

引き続き、牝馬戦線では上位で見たい一頭である。

 

3着、マジックキャッスル。

こちらもGⅢ愛知杯1着、GⅡサンスポ杯阪神牝馬ステークス2着と、充実している近走の通りに走った形。

最内の1番枠から、ちょうど中団でじっとしながら脚を溜め、直線はそのままインを突いてうまく馬群を捌いた。

うまく勝ち馬の航路を通ってきた2着馬には負けたが、それでも十分に走っている。

 

3着までを、すべてディープインパクト産駒が独占。

相変わらずの東京マイルでの強さを見せつけた。

 

 

残り200mから見せた、グランアレグリアの独走。

歴史的名馬たちを重ねたくなる脚だった。

 

控えなさい。

 

そんな言葉が聞こえてきそうな末脚。

 

2021年ヴィクトリアマイル、グランアレグリアが制す。

 

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