先日、不思議なお花の記事を書いた。
ベランダに放置していた鉢から、ひとりでに芽が出てきて、水をあげていたら紫色の花が咲いたのだ。
3年前、娘が保育園の卒業時にいただいた記念品の鉢。
そのときに育てたお花は、とうに終わっていたのだが、その鉢からひとりでに芽が出てきたので、何のお花が咲くのだろうと、水をあげたりして楽しんでいた。
咲いたのは、紫の小さなお花。
ふたつ、みっつと開花して、日々を彩ってくれていた。
種を植えたわけでもないのに、不思議なこともあるものだと思っていたら、先日近くの川沿いをランニングしていると、同じ色に目が留まった。
おぉ、もしや、これは…と思い、近くでまじまじとその紫のお花を見つめる。
いくつも、固まって咲いていた。
花の色、形、そして茎や葉の形といい、間違いない。
あのベランダの鉢で咲いていた、不思議なお花と同じだ。
家の近くで咲いていたことで、不思議なお花の謎が、少し解けたような気がした。
おそらくだが、近所で咲いていたお花の種子を鳥か虫かが運んできたのだろう。
そういえば、たまにベランダに鳥が来たりもする。
そんな鳥か何かが、運んできたのかもしれない。
そう思うと、なんだかマジックの種明かしをされたようで、少し残念なような気もしたが、それでもあのお花が楽しませてくれたことには変わりがない。
調べてみると、おそらくだが、そのお花は「シラン(紫蘭)」だと思われる。
日本中に自生する多年草で、5月~6月に赤紫やピンク、白色の花を咲かせる。
その咲き方が蘭に似ていて、美しい赤紫色が特徴的なことから、その名がついたそうだ。
花言葉は、「あなたを忘れない」「変わらぬ愛」。
不思議なお花は、その言葉を届けてくれたようにも思えた。
「あなたを忘れない」。
それは、私自身が忘れなでいることかもしれないし、私のことを誰かが忘れずに思ってくれていることかもしれない。
それは、しばらく会っていない人かもしれないし、もう会えない人かもしれない。
それは、わからないけれど。
そう思うだけで、なんだかありがたい話のようにも思えた。
そんなことを思いながら、いつものランニングのコースの神社で、深々と頭を下げてきた。
境内では、まだツツジが咲いていた。
少し、湿った風が吹いている。
もう梅雨が、近いのかもしれない。
その少しだけ湿り気を帯びた5月の風を、胸いっぱいに吸い込んだ。
あなたを、忘れない。
そうつぶやいて、また走り出した。