大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー見習い。

462日ぶりの勝利、故郷に捧ぐ。 ~2021年 安田記念 回顧

歳を取るごとに、というわけではないが、一年が過ぎゆくのは早い。

 

想えば一年前の安田記念は、ヴィクトリアマイルを圧勝からの参戦で、史上最多(当時)のGⅠ8勝目を狙ったアーモンドアイが、マイル女王・グランアレグリアに屈した印象深いレースだった。

そのグランアレグリアは、それから秋のスプリンターズステークス、マイルチャンピオンシップを制し、歴代でも屈指の短距離王者として君臨してきた。

この春に挑戦した中距離のGⅠ大阪杯では4着に惜敗したものの、マイルに戻ったヴィクトリアマイルでは格の違いを見せつける圧勝して、この安田記念に臨む。

 

新マイル女王に対するは、一昨年の春秋マイル王者・インディチャンプと福永祐一騎手、雨の大阪杯からの巻き返しを狙うサリオスに松山弘平騎手、そしてNHKマイルカップ勝利から唯一の3歳馬の参戦となったシュネルマイスターには横山武史騎手。

さらには今年の京都金杯、読売マイラーズカップを制して復調したケイデンスコール、ダノンプレミアムとダノンキングリーのダノン2騎と多士済々の14頭。

 

前週のダービー・ロスに浸る間もなく、春のマイル王者を決める戦いの火蓋が切られる。

 

 

長い府中の向こう正面を使っての先行争い、横一線から先手を主張したのは、3番のダイワキャグニー、そしてその外からトーラスジェミニと戸崎圭太騎手が被せるようにして並ぶ。その2頭の後ろ、ポケットの位置にダノンプレミアムとラウダシオン。

 

その後ろにギベオン、外にシュネルマイスター、真ん中からインディチャンプがポジションを取る。インディチャンプの福永騎手は、今年は積極的な位置取りを選択。

さらに最内からサリオス、そしてダノンキングリーが追走。

後方集団にはケイデンスコール、そしてグランアレグリアはここにいた。後方から4番手あたりからの追走。

さらにその後方から末脚に賭けるはカデナ、カテドラル、カラテといった面々。

 

前半4ハロンは46秒4と、当日少し降った雨を考えても、高速馬場の続くこの開催の府中では緩いペースか。

ほぼ隊列に変化のないまま、4コーナーを回り直線を向く。

 

ダイワキャグニーの先頭は変わらず、内からダノンプレミアム。

グランアレグリアはまだ馬群の中で窮屈そうだ。

外からインディチャンプが脚を伸ばし、その外から3歳マイル王・シュネルマイスターもやってくる。

さらに外からダノンキングリー。全身を使って追う川田将雅騎手に応え、大外から撫で斬りにせんと伸びる。

 

しかし、馬群の中から器用に伸びてくる青い帽子、グランアレグリア。

やはりやってきた。

狭い進路を左へ右へ、巧みにエスコートするルメール騎手、その進路をこじ開けていくグランアレグリア。おそらくマイル近辺では、当代随一の末脚を持つ女王が、アクセルをベタ踏みできない狭い中で、それでも伸びてくる。

 

なんとか内へ進路を確保したグランアレグリア、そしてインディチャンプ、シュネルマイスター、大外のダノンキングリーの4頭が並ぶ。

呼吸を忘れる追い比べのラストは、ダノンキングリーとグランアレグリアが競ったところで、ゴール板を通過した。

 

際どい勝負だったが、外のダノンキングリーが、わずかにアタマ差で差していた。

 

 

1着、ダノンキングリー。

昨年のGⅡ中山記念以来、462日ぶりの勝利が、GⅠのビッグタイトルとなる劇的な勝利となった。

思えば、私も観戦に行った2019年のダービー、ロジャーバローズに屈した2着がこの馬だったのが、感慨深い。

その後はマイル~中距離路線を歩み、古馬に混じってGⅡ毎日王冠を制するなど、才気を見せてくれていたが、マイルチャンピオンシップ5着、大阪杯3着と、大舞台では惜しい競馬が続いていた。

さらには昨年の秋の天皇賞では12着と大敗を喫して以来の競馬となっていたが、休み明けでもきっちりと仕上げてきた陣営の手腕は称賛されるべきだろう。

前走シンガリ負けからのGⅠ勝利は記憶にないが、間隔を空けても力が出せる調整ができる時代になったということだろうか。

 

テン乗りで結果を出した川田騎手の騎乗も見事だった。

先行馬の後ろのポジションを取り、緩いペースの中できっちりと我慢をさせ、さらには4コーナーで内を警戒しながら、当日伸びていた外寄りの進路を確保。見事なエスコートだった。

 

ディープインパクトは、産駒が先週に続いてのGⅠ勝利。いまさらながら、府中のマイルでのディープ産駒の強さは、別格である。

そして生産者の三嶋牧場は、嬉しい初めての生産馬によるGⅠ勝ちとなった。同馬やマスターフェンサーを輩出し、近年存在感を示す日高の名門に、初めてGⅠタイトルをもたらした。

 

さて、この秋は天皇賞か、それともマイル路線か。

絶対マイル女王に競り勝ち、充実の時を迎えた同馬の今後を楽しみにしたい。

 

 

2着、グランアレグリア。

結果論にはなるが、初めての中2週という間隔が響いたのだろうか。

いつもならスッと自然に好位につけていたのが、反応鈍く後手を踏んだのは、やはり間隔が詰まると難しい面があるのかもしれない。

昨年、同馬が負かしたアーモンドアイが、同じようにヴィクトリアマイルからのローテーションで間隔を詰めて使って、後方からの競馬で2着となったことと、相似を示しているように思う。

雨、重馬場の大阪杯からのヴィクトリアマイル、そこからの中2週というのは、牝馬でなくとも相当にタフなローテーションだったのだろう。

 

後方からの競馬になり、さらにペースも緩くなったことでポジション取りも落ち着き、最後の最後までそれを挽回するチャンスがなかった。

直線での斜行で、ルメール騎手には過怠金3万円が科されたが、それだけ厳しいレースだったということかもしれない。

 

それでも、最後はよく伸びた。単勝1倍台の1番人気、マークを受ける立場で難しい中、馬群を縫うようにして2着まで脚を伸ばしたのは、やはり当代のマイル女王の意地を見せた形か。

 

おそらく現役最後の秋になると思うが、再度中距離の天皇賞に挑戦するのだろうか。

その旅路の行く末を、見守りたい。

 

3着、シュネルマイスター。

唯一の3歳馬ながら、見せ場たっぷりで大健闘の3着。4キロの斤量差はあるものの、インディチャンプを競り落としたのは見事。

前走勝利したNHKマイルカップから中3週での臨戦となったが、好調を維持させたあたり、陣営には最初からこの安田記念を念頭に置いていたのだろうか。

 

テン乗りの横山騎手もまた、見事。

不利な外の14番枠からの競馬だったが、前目のインディチャンプをマークしながら、ポジションを取っていくあたり、意思のある乗り方に見えた。この大舞台の代打騎乗で結果を出し、横山騎手はさらなる高みへの階段を上っていくようだ。

 

秋も引き続き、マイル路線を歩むのだろうか。

人馬とも、秋の大舞台での活躍が楽しみだ。

 

4着、インディチャンプ。

積極的にポジションを取りに行って3列目あたりを確保し、早めに動いて勝ちに行っての4着。一昨年のマイル王者の力は示したが、もう少しだけ足りなかったか。

強い競馬はしたものの、こういったレースの常で、一番最初に動くことの辛さから、最後に脚が甘くなった。

 

それでも、この6歳にしてまだ一線級の力を保っていること自体、称賛されるべきものだ。

2歳だった2017年の暮れから、21戦して掲示板を外したのは2019年の香港マイルのみ。国内で5着以下に敗れたことのない堅実な走りは素晴らしく、安定した地力がなければできない所業だ。

 

父・ステイゴールドが最後に大きなタイトルを獲ったように。

まだもう一つ、大きなタイトルを狙ってほしいと思う。

 

 

それにしても、順位の上から川田騎手、ルメール騎手、横山武史騎手、福永騎手と、当代の名手が掲示板を占めた。

大舞台の中、名手が名手たる所以を示したようにも思う。

 

その中でも、輝きを放ったダノンキングリーと川田騎手。

462日ぶり、故郷に捧ぐ勝利、おめでとうございます。 

 

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