大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

白き桜の君、風薫る皐月を駆ける。 ~2022年 ヴィクトリアマイル 回顧

新緑の5月の府中を舞台に、マイル女王の座を賭けて争われる、GⅠヴィクトリアマイル。

ウオッカ、ブエナビスタ、アーモンドアイ、グランアレグリア…勝ち馬には、錚々たる歴史的名牝の名が並ぶ。

2022年の今年は、歴代でも屈指と思えるくらいの、好メンバーが揃った。

GⅠ馬の出走は5頭という数以上に、濃いメンバーが集まった。

覚悟の距離短縮でマイルに挑む、レイパパレが1番人気。ただ最終的に4倍を超える単勝人気に、好メンバーに揺れるファンの心理が表れていた。

前年の牝馬クラシックをにぎわせGⅢ東京新聞杯でも強い競馬の2着と、マイルに適性を見せるファインルージュが2番人気、さらにサウジアラビアでGⅢ1351ターフスプリントを勝ったソングラインが続く。

史上初の白毛のGⅠホースで、近走はダートにも挑戦していた稀代のアイドル・ソダシは、4番人気。

そして、「よくぞ」ターフに戻ってきてくれた、三冠牝馬・デアリングタクトに、スプリント戦線の主演を続けるレシステンシア。

さらには良血・アンドヴァラナウトやテルツェット、アカイイトなども虎視眈々。

2022年、春のマイル女王決定戦は、百花繚乱の18頭によって争われた。

 

先週に引き続き、府中に鳴り響くGⅠのファンファーレ。

横一線のスタートから、テンの速いレシステンシア、そしてソダシも白い馬体を躍らせて先手をうかがう。

最内のデアリングタクトは、行きたがる素振りを松山騎手が手綱を引いている。

一方、川田将雅騎手のレイパパレは、後手を踏んで後方から。

戦前、逃げ宣言をしていたローザノワールと田中勝春騎手が、外から押してレシステンシアとソダシをかわして先頭に立つ。

レシステンシアは争わず、ソダシも内から追走する。出遅れたレイパパレは、押してリカバーして4番手あたりまで押し上げる。

中団前目の内からデアリングタクト、その外にファインルージュがぴたりとつける。

その後ろにソングラインと、アンドヴァラナウトといった態勢。

 

一団となった隊列をローザノワールが単騎で引っ張り、前半の半マイルは34秒7。

中間雨がかなり降ったものの、良まで回復した馬場を考慮すると、スローに近い中間ペースか。

ローザノワールが3馬身ほどのリードを保ったまま、直線へ。

レシステンシア、ソダシ、レイパパレの先行集団も進路を確保して、追い出しにかかる。最内からはデアリングタクトが差を詰める。

しかしレイパパレは一杯になり、レシステンシアとソダシが併せ馬の形に。

残り200mを切っても、ローザノワールが粘り腰を見せる。

しかし、レシステンシアを振り落としたソダシが、そのままの勢いで先頭に立つ。

府中の直線を、白い風が吹き抜けた。

素晴らしい伸び脚で、瞬時に2番手以下との差を広げる。

後ろから脚を伸ばしたファインルージュ、ソングラインの2頭と、レシステンシア、ローザノワールの2頭が並びかけるが、もう届きそうになかった。

 

ソダシ、1着。

2着争いを制したのはファインルージュ、そして3着には粘ったレシステンシア。

さらにはローザノワール、そしてソングラインまでが掲示板を確保した。


 

1着、ソダシ。

稀代のアイドルホースが、3年連続でのGⅠ勝利を成し遂げた。

ここ2走はダートへ挑戦をしていたが、芝に戻っての勝利は、見事の一言。

テンからポジションを取りに行ける、レースセンスの良さが、この馬の最大の武器だが、今日はそれに加えて上り3ハロン33秒4の決め手を繰り出しては、後続はなす術なしだったか。

白毛に生を受けるだけでも希少なのに、GⅠ・3勝を成し遂げるとは、途方もない奇跡を見ているように感じる。

直線を迎えて、余裕を持って追い出した吉田隼人騎手のエスコートもソツがなく、円熟味を感じさせる騎乗だった。

これで芝のマイルは4戦4勝と、適距離での強さが際立つ。

この先は、歴戦の牡馬との安田記念か、それとも…白い馬体の踊るレースを、楽しみに待ちたい。

 

2着、ファインルージュ。

中団待機から脚を伸ばし、混戦となった2着争いを制した。

展開が向かなかったとはいえ、上り3ハロンは勝ち馬と同じになってしまったあたり、今日は勝ち馬が一つ上だった。

とはいえ、前年のクラシック戦線をにぎわせた世代上位の脚は、古馬に混じっても輝きを放った。

2月のGⅢ東京新聞杯からのローテーションだったが、影響は感じさせないあたり、ある程度間隔を空けた方がいいのだろう。

鞍上のクリストフ・ルメール騎手は、今年初の国内重賞制覇はならず。

5月になっても、ルメール騎手が重賞未勝利という、例年からすると「異常事態」は、継続となった。

 

3着、レシステンシア。

前走、GⅠ高松宮記念からの距離延長が懸念されたが、問題なくポジションを確保し、折り合っていた。

ソダシにかわされてからの粘り腰は見事で、地力の高さを見せてくれた。

短距離戦線で一線級の力を誇示し続けているが、まだ2歳GⅠ以来の大輪の花は咲かず。

クラブ規定からすると、この秋がラストチャンスだが、もう一つ大きいところを獲れるだろうか。

快速女王の走りに、期待したい。


 

2022年、ヴィクトリアマイル。

歴代屈指の好メンバーが揃った一戦を制したのは、ソダシ。

白き桜の女王が、風薫る皐月を駆けた。

 

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