大嵜直人のブログ

たいせつな何かをなくした心に、ともしびを。

散る夢と、叶う夢と。 ~2021年 エリザベス女王杯 回顧

京都競馬場の改修により、阪神内回り2200mでの開催となった、2021年のエリザベス女王杯。

春のマイル女王・グランアレグリアは天皇賞・秋からマイルチャンピオンシップに向かい、春の香港・クリーンエリザベス2世カップを制したラヴズオンリーユーは、遠く太平洋を渡った西海岸でブリーダーズ・カップ勝利の快挙を成し遂げた。

されば国内女王の称号を得んと、16頭の牝馬が仁川に集結した。

スタートから押して出たのは、7番枠の団野大成騎手のシャムロックヒル。
こちらも逃げが予想されたロザムールと池添謙一騎手も、外14番枠からハナに絡みに行くが、無理はせずに番手のポジションに収まる。

有力馬の一角、3番人気のウインマリリンと横山武史騎手も、積極的にポジションを主張し、前に2頭を置く3番手、いわゆるポケットの位置を確保。

一方、注目された1番人気のレイパパレと出方は、最内1番枠から先行集団に潜り込ませる形を取る。春の大阪杯を逃げて制しているが、クリストフ・ルメール騎手は2200mの今回は距離も考慮してか、控える形を選んだ。
さらに、秋華賞を制して臨む3歳馬・アカイトリノムスメは、内のレイパパレをマークする形で戸崎圭太騎手は進める。

上位人気の3頭が前目につける展開で、仁川の向こう正面を進む。
団野騎手のシャムロックヒルが刻んだラップは、前半1000mが59秒ジャストと、淀みのない流れ。

そんな早い流れではあったが、レイパパレはルメール騎手が手綱を短く引いたり、たびたび膝を伸ばしたり、抑えるのに苦慮しているように見えた。

3コーナーを回り、各馬徐々に手綱が動き、前との差が縮まっていく。
前2頭をかわして、レイパパレが先頭で内回りの直線を向く。

真ん中からランブリングアレーが脚を伸ばし、さらに外からピンクの帽子、アカイイトと幸英明騎手が強襲。内のアカイトリノムスメを競り落とし、さらに伸びる。

もう一杯になっているレイパパレをかわして、先頭に立つ。
アカイイトはさらに伸びて、重賞初制覇をGⅠの舞台で決めた。

激しくなった2着以下の争いは、外から足を伸ばしたステラリアが2着、そして内からクラヴェルが3着争いを制した。

レイパパレは、やはり道中、力んで走っていたことが響いたか6着と掲示板を外す結果となった。それをマークするように走っていたアカイトリノムスメも7着、そしてウインマリリンは16着と敗れた。
上位人気が揃って敗れたことで、3連単は3百万越えと波乱の決着となった。

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大番狂わせ、と呼ぶには、あまりにも見事な、アカイイトの末脚だった。
切れ味よりも持続力と総合力が求められる、阪神2200mという舞台がぴたりとハマったように見える。同じコースの宝塚記念で、これまで起こった数々の波乱の歴史を想起させる。

先週から内が荒れ、外差し馬場になっていたことも、16番枠の同馬には有利に働いたのだろう。

そして何より、そのハマった条件で力を十二分に発揮させた、幸騎手の手綱も見事だった。この難しい条件でのテン乗りで、で満点回答の騎乗。やはり牝馬三冠ジョッキーの実績は、伊達ではない。

思えば18年前、その三冠牝馬のスティルインラブとともに、このエリザベス女王杯に臨んだが、同期のアドマイヤグルーヴにハナ差及ばなかった。
その18年越しの忘れものを、アカイイトと取りに来たと思うと、感慨深い。

アカイイトの父・キズナは、産駒初のGⅠ制覇。
後から調べてみて知ったのだが、キズナ産駒の阪神2200mの勝率は20%を超えている。現役時代の切れ味鋭い末脚のイメージからすると意外だったが、これからさらに活躍する産駒が現れることを期待したい。

そして同馬の岡浩二オーナーは、先日、期待の九州産馬・ヨカヨカが、GⅠスプリンターズステークスを前に、大きな怪我で引退となっていた。
その無念を、この仁川の舞台で晴らした形となった。

散る夢と、叶う夢と。
運命が仁川で交錯した。

アカイイト、2021年エリザベス女王杯を制す。

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