大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

10月3日、創世記へ。 ~2021年 宝塚記念 回顧

夏のグランプリ、宝塚記念。
2021年の今年は、上位3番人気までを牝馬が占めた。

前年の宝塚記念からの連覇を狙うクロノジェネシス、主戦の北村友一騎手が5月に落馬負傷したことにより、クリストフ・ルメール騎手が初めて手綱を取る。それに続くは無敗で春の大阪杯を制し、まだ底を見せないレイパパレと川田将雅騎手、さらには悲願のGⅠ制覇を狙うカレンブーケドールと戸崎圭太騎手。さらにはミスマンマミーア、メロディレーンといった牝馬も出走、華やかなグランプリになった。

一方、牡馬は4番人気のアリストテレスが4番人気、さらには7歳キセキが続く。サラブレッドの完成期とされる4歳世代の牡馬からは、一頭のみの出走となった。大将格のコントレイルが、疲労が抜けきらず不出走となり、少し寂しい陣容となった。

古馬の中長距離路線で、これだけ牝馬が人気になることは、ひと昔前では考えられなかったように思う。単に牝馬が強くなったのか、さまざまな調教技術などの進歩で、その実力を発揮できるようになったのか。

心配された雨も上がり、梅雨の合間の青空が覗き、良馬場での開催となった。
緑鮮やかなターフに、年に一度のファンファーレが鳴る。

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大方の予想通り、レースを引っ張ったのは坂井瑠星騎手のユニコーンライオン。無敗のレイパパレは今日は逃げずに番手に控え、キセキも外から好位を取りに行く。
クロノジェネシスはその後の4,5番手の位置を自然に確保、それを見る形でカレンブーケドール。昨年同レース2着のモズベッロ、そしてアリストテレスは中団あたりの位置からの追走。

隊列が決まってからは、ほぼ落ち着いて流れていき、前半の1000mを1分ジャストで通過、馬場とメンバーを考えるとスローペース。
大きな動きのないまま、3コーナーに差し掛かり、レイパパレ、キセキが前との差を詰めていき、さらにはカレンブーケドールも仕掛けていく。直線を向き、逃げ粘るユニコーンライオンをレイパパレが交わしたかに見えたが、ユニコーンライオンも抵抗する。

しかし、その後ろからやってきた、クロノジェネシス。
全く違う脚色で前の2頭を交わし、2馬身半差をつけての圧勝。昨年に続いての宝塚記念連覇、GⅠ4勝目を飾った。

2着に差し返したユニコーンライオン、そしてレイパパレは初めての敗戦となる3着での入線となった。

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1着、クロノジェネシス。

強かったの一言。
デビュー時440キロだった馬体重は、今日は478キロとデビュー以来最も重い数字を記録したように、年を重ねるごとに身が入り、充実していくようだ。

レースぶりも盤石。自然な形で好位を取り、3コーナーでは少し押し込められそうになったが、そこは歴戦のルメール騎手、うまく進路を確保しながらのコーナーリングで、直線を向くことができた。あとは、余力たっぷりに追い出され、前有利のスローペースの中、次元の違う末脚を繰り出した。

衝撃的だった昨年の勝ち方に比べると派手さはないが、明らかに違う力量差を見せつけた内容だった。道中の位置取りがほぼそのまま到達順位のような形の競馬の中、1頭だけ抜け出してきたのは見事と言うほかない。

デビュー以来手綱を取ってきた北村友一騎手の負傷離脱で、テン乗りとなったルメール騎手だったが、そんなことは微塵も感じさせない見事な騎乗。これで今年の上半期だけでGⅠを4勝と、快進撃は続く。

母・クロノロジストから受け継いだ冠名に、「Genesis:創世記」と付けられた、その馬名。父・バゴは、言うまでもなく凱旋門賞馬である。

2021年10月3日、フランス、ロンシャン競馬場。日本競馬の新たなる創世記へ。
そんなことを夢想したくなる、グランプリ3連覇となる勝利。

 

2着、ユニコーンライオン。

同型のレイパパレが主張してこなかったとこもあり、1番枠だったがすんなりと先手を取ることができたのが、好走の一因か。道中、落ち着いたペースを刻み、余力を残しながら勝負どころを迎えた、坂井瑠星騎手の好騎乗が光った。
一度はレイパパレに交わされながらも、最後に差し返したところは、この馬の底力とレースの組み立てのうまさによるものだろう。胸を張っての、グランプリ2着だ。

そして、坂井騎手。グランプリとなるGⅠでも、馬の力を余すことなく出し切る騎乗。横山武史騎手など年下の騎手が元気だが、どこかの大舞台で一発がありそうな匂いをさせる、そんな騎乗だった。若い才能の発露が見られるのは、年を重ねる喜びである。その才能の発露を楽しみにしていたい。

 

3着、レイパパレ。

ユニコーンライオンとは争わず、川田騎手にとっては予定通りの2番手だったか。ただ、ペースは想定よりも遅かったのかもしれず、番手でなだめるのに苦労した分、最後が甘くなったのかもしれない。前残りの展開に恵まれた3着と見ることもできるし、初めての敗戦で3着と崩れなかったとも見れる。
やはり戦前から少し懸念があったように、2200mは少し長かったのかもしれない。その中で、2000mの大阪杯からの距離延長は、だいぶ堪えたのだろう。そう考えると、秋の最大目標は府中の天皇賞になるだろうか。
一度負けたことで楽になる部分もあると思われるし、秋のさらなる飛躍を期待したい。

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昨年に続いて連覇を決めたクロノジェネシス。
何はともあれ、どうか、無事に秋を迎えてほしい。

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