先月に引き続き、一宮市は尾張猿田彦神社を訪れました。
緊急事態宣言など、諸々の制限が解除されたせいか、高速道路も下道も、以前に比べて交通量が一気に増えたように感じます。
少しずつ戻ってゆく経済活動もありつつ、もう戻らない・消えていくものもあるのでしょう。
不可逆な高速道路の流れに身をまかせながら、そんなことを考えていました。
朝の渋滞に巻き込まれながらも、なんとかたどり着き、朝のお勤めの時間に間に合いました。
祓詞、大祓詞を読ませていただくことができました。
掛けまくも畏き伊邪那岐大神
筑紫の日向の橘小戸の阿波岐原に
声に出す、というのは不思議なものです。
書かれたものに、いのちを吹き込む行為であり、声とともに立ち上がるそれは、どこか儚いように感じられます。
声に出した瞬間に、もうそれはどこかへ霧散していくような。
いまは亡き祖父が、熱心にお経を唱えていたことを思い出します。
それにしても、分からないものです。
縁もゆかりもなかったこの神社で、何度もこうしてお参りをさせていただいて。
いや、すでにこうして参拝させていただいている事実が、ご縁があったということなのでしょう。
参拝の御礼を申しあげ、境内に出ると、鮮やかな赤が。
この赤色を見ると、冬はもうすぐそこに来ているようです。
そういえば、この間まで立冬の初候、「山茶始開、つばきはじめてひらく」の時候でした。
いまは、「地始凍、ちはじめてこおる」。
大地が初めて凍り、朝晩の寒暖差で紅葉が進んでいくころです。
見上げると、白い花が。
見ると、桜のようです。
冬に向かうこの時期に、桜。
以前にも、自宅の近くで見かけて調べたような記憶があるのですが、秋咲きの桜もあるようです。
十月桜、冬桜、四季桜といった品種で、秋から冬にかけて花開く桜の木。
それぞれの写真を見比べると、境内に咲いていたこの白い花は「冬桜」のように見えましたが、どうなのでしょうか。
桜と聞くと、春のソメイヨシノのイメージがほとんどですが、この少し肌寒い霜月の風に咲く桜もまた、いいものです。
秋の空の青さが、とても映えるようです。
調べてみると、気温や栄養状態などの要因で、季節外れに咲く花を「返り花」と呼ぶことがあるそうです。
そういえば先日、路傍にツツジの花が一輪咲いているのを見かけました。
暖冬傾向になっているせいか、「返り花」も増えているのでしょうか。
ほかに「狂い咲き」という言葉もありますが、「返り花」の方が美しく感じます。
赤い花、白い花。
冬に向かう霜月の花に見守られつつ、境内を後にしました。