ハチドリドロップス@モノと心の\ズボラ/片付けカウンセラー ふせけいこさんのstand.fmチャンネルに朗読用の文章をご提供しております。
音声メディアが盛り上がりを見せて久しいですが、こうしてさまざまな形で、言葉と向き合うことができるのは、ありがたい限りです。
貴重な機会をいただきましたハチドリさんには、あらためて感謝申しあげます。
第2回は、「ついつい笑顔でがんばってしまうあなたへ」。
こちらのリンクから、お楽しみください。
いつも、その子は笑っていたよね。
公園のブランコに、ひとり。
木枯らしの吹く空を見上げて、笑みを浮かべていたよね。
ほかに、その胸の内を表現する方法を、知らなかったから。
何かにつまずいて、転んでしまって。
えへへ、と笑っていたよね。
その痛みを、たいせつな人に悟られないように。
にぎやかな、みんなの輪に入るかわりに。
穏やかな笑顔で、それを眺めていたよね。
「わたし、ここにいるよ」、そう伝えるために。
まるで、能面をかぶったように。
変わらず、笑っていたよね。
気丈に笑っている、それが、せいいっぱいの抵抗だったから。
希望の灯火が、ふっと消えたとき。
そっと目を閉じて、微笑んでいたよね。
そのまぶた裏に映る、やさしかった人もまた、笑っているから。
いつも、その子は笑っていたよね。
いつも、その子は笑っていたね。
いつも、その子は笑っていた。
いつも、その子は。
ふわり浮かぶ、笑みを浮かべた、その子。
寄る辺なく、ゆらゆらと揺蕩う、その子。
その、か細い小指に触れ。
その、あたたかな手を握り。
その、ちいさな肩を抱きよせ。
その、やわらかな髪を撫で。
伝えたい、そのことば。
がんばってきたよね。
さびしかったよね。
よく、がまんしたよね。
ずっとずっと、ありがとう。
いままでずっと、ありがとう。
ここに、いるよ。
ずっと、いっしょにいるよ。
ずっとずっと、ありがとう。
いままでずっと、ありがとう。
ずっとずっと、いっしょにいるよ。
その微笑みといっしょに、ずっと、いるよ。