時に小満、あらゆる生命が天地に満ち始めるころ。
うら若きサラブレッド3歳牝馬の頂点を極める、オークスが行われる。
2022年の今年、1番人気は2歳女王・サークルオブライフとミルコ・デムーロ騎手。桜花賞は4着に敗れたが、距離が伸びてこそ真価を見せるか。
それに続くは、忘れな草賞を勝って臨む、アートハウス。デビューから2000mのレースを使われ、完全にこのオークス一本に絞ったローテーション。
母・パールコードの主戦だったが、「重賞を勝たせられなかった」と語る川田将雅騎手は、桜花賞馬からこのアートハウスに乗り替わり。実績よりも、自らの義と信を重んじた選択の結果は如何に。
その桜花賞馬・スターズオンアースには、クリストフ・ルメール騎手が騎乗。桜花賞は川田騎手がテン乗りで制したが、ルメール騎手もテン乗りとなった。3番人気、桜の女王は反発するか。
素質馬・ナミュールや、ルージュエヴァイユ、ウォーターナビレラなど、幾多の狭き門をくぐり抜け、栄光のゲートにたどり着きしは18頭。
しかし発走直前、輪乗りの際にサウンドビバーチェが他馬に蹴られて放馬。
それにより、15分間の発送遅延が発生。
極限まで仕上げられ、研ぎ澄まされた、繊細な3歳牝馬にとって、あまりにも長い待ち時間となった。
サウンドビバーチェは、競争除外。
ここまでの関係者の尽力を考えると、どこまでもやりきれない想いが募る。
それでも、17頭によってゲートは開く。
サークルオブライフが、両サイドから挟まれる不利で、最後方まで後退。
さらに、ウォーターナビレラも出遅れる。
先手を取ったのは17番枠から押してニシノラブウインク、さらにトライアル・GⅡフローラステークスを逃げたパーソナルハイが2番手。
その2頭が後続を離し、3番手に川田騎手のアートハウス。
大外18番枠から出たスターズオンアースは、ちょうど中団の外目あたりをキープ。
向こう正面に入り、徐々に前2頭と後続の差が詰まっていく。
ほぼ一団となったまま、直線を向く。
入場制限も徐々に緩和され、3万人超が見守る直線の攻防。
外から素晴らしい伸び脚を見せたのが、スターズオンアース。
内から伸びるスタニングローズを退け、栄光のゴール板を駆け抜けた。
不屈の桜花賞馬、スターズオンアース。
意地の二冠達成。
厳しい大外枠からの発走ながら、道中はアートハウスを見るような形で折り合い、馬場の良い外目から差し切った。
外目追走からの上がり3ハロン33秒7は、まさに力の証明。
発走前のアクシデントをものともしない、強靭な精神力をも示した。
今年に入って、国内重賞未勝利だったクリストフ・ルメール騎手にとっては、今年の重賞初勝利をGⅠの舞台で成し遂げた。
この大舞台をテン乗りで制するのは、恐れ入るばかり。
この春のGⅠでは2着が続いたりと、悔しいレースが多かったが、次週のダービーも含めて、クライマックスに向けていよいよエンジン全開か。
2022年、オークス。
発馬前のアクシデントを乗り越え、二冠を達成したスターズオンアース。
久々の美酒に酔ったルメール騎手のコメントにあった、「アーモンドアイ級」の賛辞。
秋が、楽しみだ。