大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

「皆さんが期待しているであろう場所」 ~2023年 桜花賞 回顧

1.レース・出走馬概要

クラシック第1弾となる、桜花賞。

仁川の桜の下、3歳のうら若き牝馬がそのスピードを競う。

桜、そして3歳牝馬と、強く生命の輝きを感じさせるこのレースは、個人的に大好きなレースの一つでもある。

牝馬が強い近年のトレンドから、牝馬クラシックの一冠目としてだけでなく、歴史的名牝への登竜門的な位置づけも持つようになってきた。

直近5年の優勝馬を見ても、アーモンドアイ、グランアレグリア、デアリングタクト、ソダシ、スターズオンアースと、綺羅星のような名が並ぶ。

2023年の今年もまた、そのようなスター誕生の幕開けとなるのか。

 

その最右翼が、リバティアイランド(牝3、栗東・中内田充正厩舎)。

昨年末の阪神JFを完勝し2歳女王に輝いた同馬は、父・ドゥラメンテから受け継ぐ破壊力満点の末脚が魅力。歴代の名牝に勝るとも劣らないと見えるその末脚を、再び仁川で炸裂させるか。トレンドとなった阪神JFから直行の臨戦態勢を取り、鞍上・川田将雅騎手は継続して騎乗、昨年のスターズオンアースに続いての連覇なるか。

 

近年、勝ち馬の活躍が目立つGⅢシンザン記念を勝って挑むのが、ライトクオンタム(牝3、栗東・武幸四郎厩舎)。

先週、絶妙の逃げで大阪杯を制した武豊騎手が騎乗。管理する武幸四郎調教師との「兄弟タッグ」での桜花賞挑戦は、昨年のウォーターナビレラに続いて2年連続。亡き父・ディープインパクトの最終世代の産駒となる同馬、無敗で桜の女王に駆け上がるか。

 

ハーパー(牝3、栗東・友道康夫厩舎)は、C・ルメール騎手との初コンビでの参戦。

2000m戦でデビュー(2着)したのち、未勝利、GⅢクイーンCと連勝して挑む。阪神と同じ、広い東京コースでのマイル重賞を制した実績を、この大舞台でも活かすことができるか。

 

阪神JFで2着だったシンリョクカ(牝3、美浦・竹内正洋厩舎)。

皐月賞との両にらみが報じられたが、賞金順で出走可能性が高まったことで、こちらを選択。阪神JFでは勝ち馬に離されたが、そこから約4か月を経て、逆転はあるのか。

 

トライアルのGⅡチューリップ賞を制したのが、モズメイメイ(牝3、栗東・音無秀孝厩舎)。

2月のこぶし賞から、本番と同じコースを逃げ切って連勝。阪神マイルでの好適性を武器に、戴冠を狙う。

 

同じくトライアルのGⅡフィリーズレビューを制した、シングザットソング(牝3、栗東・高野友和厩舎)。

そのフィリーズレビューでは、前走までと位置取りを変えて、ハイペースのなか先行して勝ち切る競馬を見せた。本番でのポジション取りに注目したい。

 

昨年のGⅢアルテミスSを制したラヴェル(牝3、栗東・矢作芳人厩舎)。

次走の阪神JFでは崩れたものの、そこからの巻き返しを図る。ドバイWCを制した「世界の矢作厩舎」の仕上げに、注目が集まる。

 

さらには、一昨年の年度代表馬・エフフォーリアの半妹という良血のペリファーニア、重賞での実績多数のドゥアイズ、チューリップ賞2着から挑むコナコーストなど、うら若き3歳牝馬のスピード自慢が揃った。

 

今年の桜は開花が早く、仁川の桜もすでに散り際に。

それでも、いくつかの花弁は、桜花賞まで散るのを待っていてくれたようだった。

散りゆく桜の花びらの下、女王の座を射止めるのはどの牝馬になるのか。

2.レース概要

中間の雨から、前日の土曜日は重馬場でのスタートとなったが、時間の経過とともに回復。

雨も上がり、良馬場での施行となった。

発馬で後手を踏んだのは12番のドゥーラ。

それ以外はまずます揃ったスタートから、戦前の予想通りにモズメイメイが先手を奪い、番手にはコナコーストがつけ、シングザットソング、ペリフォーニアなども前目のポジションから。

ライトクオンタムはちょうど中団あたり、前にハーパーを見る態勢。

圧倒的人気を背負ったリバティアイランドは、スタートからの出足がつかず、徐々に後方にポジションを下げる形で、後方から3、4頭目からの競馬。

馬群はそれほどばらけず、前半3ハロンは45秒9と平均ペースか。

モズメイメイが先頭のまま3コーナーを回り、後続馬も徐々に差を詰めていきながら、4コーナーを迎える。

リバティアイランドは、まだ後方3番手あたりで、川田騎手は外を回そうとしている。

迎えた直線、粘るモズメイメイにコナコーストが馬体を併せにかかり、その外からペリフォーニアが指してくる。

そのさらに外から、黒い帽子のリバティアイランド。

豪脚を伸ばし、前の2頭を強襲。

残り50m付近で、まとめて2頭をかわすと、そのままゴール板を先頭で駆け抜けた。

勝ちタイム1分32秒1。

2着にコナコースト、3着にペリフォーニア。

3.各馬戦評

1着、リバティアイランド。

恐るべき末脚。

直線だけで、前の15頭を差し切ってしまった。

発馬から進んでいかず、勝つならば大外をぶん回して勝ち切るしかないと思っていたが、それは地力が何枚も抜けていないとできない勝ち方。

それをやってのけてしまうとは、3歳牝馬では抜けた存在であることを証明した。

それも、当週からBコースに変わり、前が止まらずに外差しが効かないレースが続く中で、この芸当をやってのけるのだから、言葉が無い。

折り合いをつけたことで、距離への不安も少なく、順調にいけばオークスもまた最有力の一頭になるのだろう。

それにしても、後方からになりながらも慌てず騒がず、リバティアイランドの力を信じ切った川田騎手の素晴らしい騎乗だった。

川田騎手といえば、騎手としての立場を重んじてか、インタビューで今後のローテーションのことについて積極的に答えないイメージがあるが、今日のインタビューでは「皆さんが期待してるであろうところ」という言葉を使っていたのが、印象的だった。

さて、リバティアイランドは、どこへ連れていってくるのだろうか。心から楽しみにしたい。

何はともあれ、どうか順調に。

 

2着、コナコースト。

鮫島克駿騎手の完璧といっていいようなエスコート、直線に入った時は、この馬が勝つかと思ったが…

勝ち馬が強かった、としかいいようがない結果となった。

新馬戦以降は、常に人気以上に走っているのは、レースセンスの高さによるものが大きいのだろう。

このあたり、父・キタサンブラックから受け継いでいるようにも思う。

鮫島騎手は、GⅠで素晴らしい騎乗をして惜敗、というのが何度も続いているようにも思う。

これからの騎乗も、楽しみにしたい。

 

3着、ペリフォーニア。

こちらも前目もポジションから、スムーズな競馬での3着。

いかにも良血らしい、そつのない走り。

成長力に富む父・モーリスから、まだまだよくなるのだろう。

長い目で、見ていきたい。

 


 

皆が期待しているであろう場所へ向けて、まずは一冠目。

2023年桜花賞、リバティアイランドと川田将雅騎手が制した。

 

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