大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

最大着差の、最大幸福。 ~2023年 優駿牝馬(オークス) 回顧

1.レース・出走馬概要

いよいよ、春のクラシック戦線もクライマックス。

時は小満、あらゆる生命が天地に満ちるころ、オークスがやってくる。

生命力に満ちた3歳牝馬が、未体験となる府中の2400mというチャンピオンコースに、世代の頂点を賭けて挑む。

牝馬三冠の二冠目、歴代の三冠牝馬が通ってきた道でもあり、また桜花賞から800mもの距離延長が、数々の波乱を巻き起こしてきたレースでもある。

2023年の今年も、桜花賞組と、それ以外の路線からの新鋭が激突する。

 

2023年のオークスの中心を担うのは、リバティアイランド(牝3、栗東・中内田充厩舎)。

昨年の阪神JFを驚異の末脚で制すると、直行した桜花賞でも上がり32秒台の末脚を繰り出して圧勝。歴代の優駿と比較されるほどの末脚が、広い府中でも炸裂するか。鞍上は、デビュー以来手綱を取る川田将雅騎手。

 

桜花賞2着から逆転を狙う、コナコースト(牝3、栗東・清水久詞厩舎)。

旋風を巻き起こすキタサンブラック産駒である同馬は、デビュー以来連対を外さない堅実な走りを見せている。常に好位から進められる操縦性の高さを活かして、逆転成るか。鞍上はD.レーン騎手に乗り替わり。

 

桜花賞3着だったのがペリフォーニア(牝3、美浦・鹿戸雄一厩舎)。

その桜花賞では好位からしぶとく粘っての3着と、地力の高さを見せた。2021年の年度代表馬・エフフォーリアを半兄に持つ良血馬が、兄妹クラシック制覇を目指す。鞍上はデビューから変わらず横山武史騎手。

 

桜花賞4着から、距離が伸びてよさそうなのがハーパー(牝3、栗東・友道康夫厩舎)。

父・ハーツクライの血統、そして東京2400mの勝ち方を熟知している友道調教師とC.ルメール騎手のコンビとくれば、期待せずにはいられない。2月のクイーンCを勝っており、府中での実績も十分。

 

同じく距離延長で面白そうなのがドゥアイズ(牝3、栗東・庄野靖志厩舎)。

桜花賞では中団からの競馬から、直線しぶとく伸びての5着。父・ドゥラメンテから、また新たなGⅠ馬が誕生するか。鞍上は引き続き吉田隼人騎手。

 

トライアルのフローラSを制した、ゴールデンハインド(牝3、美浦・武市康男厩舎)。

そのフローラSでは、先手を取っての逃げ切り勝ちを決めた。父はスタミナ無尽蔵のゴールドシップ、このオークスでも楽しみな存在だ。鞍上は前走と同じく、菅原明良騎手。

 

その他にも、フローラS2着のソーダズリング(牝3、栗東・音無秀孝厩舎)、あるいはオークス馬ミッキークイーンを母に持つミッキーゴージャス(牝3、栗東・安田隆行厩舎)など、3歳牝馬のトップクラス18頭が揃った。

鮮烈だった桜花賞に続いての二冠か、それを阻止する惑星は現れるのか。

2.レース概要

レース前の共同会見で、川田騎手が「発走前2秒間の静寂」をお願いする、異例のコメント。

スタンド前発走という、3歳牝馬にとってはデリケートなコース形態もあるが、個人的にはとても素晴らしいコメントだと感じた。

そのコメントのおかげもあってか、出遅れる馬はなくスタートが切られる。

1コーナーまでの難しい先行争い、前に行ったのは3番枠から内の3頭と、大外からイングランドアイズ。

ハナを切るかとも思われたゴールデンハインドはその先団の後ろ、そしてその内にリバティアイランド。

やや行きたそうなそぶりを見せるも、川田騎手がなだめながら前目の位置をキープ。

その真後ろのポジションを取ったのが、ルメール騎手のハーパー。

ペリフォーニアは中団からやや後ろの位置取り、そしてコナコーストは発馬の直後に他馬との接触があり後方からの競馬となった。

先頭を行くライトクオンタムは軽快に逃げ、前半の1000mを60秒ジャストで刻んでいく。

結果的に、ラップは13秒台を一度も刻むことなく、持久力とスピードの持続性が高いレベルで求められるレース展開となった。

馬群の並びは変わらず、そのまま直線に向くと、川田騎手はリバティアイランドを馬場の真ん中に持ち出す。

ここから、まさに独擅場。

持ったまま先頭に並びかけると、残り200mで鞭が入る。

先頭を行くラヴェルを交わすと、あとは一人旅。

もはや鞭を打たれることなく、2着馬にグレード制導入以降のオークス史上最大となる6馬身の差をつけて、ゴール板を通過した。

勝ち時計2分23秒1は、2019年のラヴズオンリーユーが記録したオークスレコードに0秒3迫る猛時計。

2着にはハーパー、そして3着にはドゥーラが入った。

3.各馬戦評

1着、リバティアイランド。

もはや、言葉がない。

道中13秒台に落ちることのないラップの中、ラストの3ハロンは12秒0-11秒6-11秒5と、加速ラップでまとめたのは驚異的といえる。

東京2400mで、こんな芸当をできるのは、歴代で見てもそうそういないのではないか。

すでに、歴史的名牝の域に達していると思わされる走りだった。

川田騎手が勝利騎手インタビューで述べていたように、輸送もありテンションが高めではあったが、道中丁寧に丁寧にエスコートしたことで、最後の末脚の爆発を引きだした。

このあたり、桜花賞で無理に追走させなかったことや、2歳時のアルテミスSでの敗戦が活きているのだろう。

ここまで無事に出走できることに至った、関係者の方々の尽力に敬意を表したい。

さて、これで牝馬二冠。

この先に、どんな夢を見せてくれるのだろうか。

ファンの勝手な妄想は膨らむばかりだが、何はともあれ、そして何よりも、無事に。

また、その美しい走りを、競馬場で見られることを楽しみにしたい。

 

2着、ハーパー。

一頭強い馬がいる中でも、奇策を弄さずに、最大限のできることをするというルメール騎手の騎乗。

リバティアイランドの後ろをスナイパーのように陣取り、無駄なくエスコートした騎乗は見事だった。

勝ち馬には離されたものの、2着争いを制することができたのは、やはり長距離への適性の高さゆえか。

リバティアイランドと同世代でなければ…というタラレバを言いたくもなるが、舞台を変えての逆転を期待したい。

 

3着、ドゥーラ。

桜花賞14着から、見事に巻き返した。

こちらも、距離適性の高さが最後の余力につながったか。

齋藤新騎手は、外目外目を回る競馬で、最後に馬券内を確保した。

まだまだ良化の余地がありそうな同馬、次の走りを楽しみにしたい。

 


 

最大着差の、最大幸福。

2023年オークス、リバティアイランドと川田将雅騎手が二冠を達成した。

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