「怖れ」があると、なかなか新しい一歩が踏み出せなかったりします。
しかし、それを無理矢理に乗り越えようとするのではなく、その恩恵に感謝しつつ手放すのがおすすめです。
1.執着をゆるめるために
昨日の記事では、執着をゆるめるためには、というテーマでお伝えしました。
自分のなかの愛を認め、その価値を見ることは執着を緩めてくれる。 - 大嵜直人のブログ
ここのところ、「手放し」について扱ってきました。
何かに執着してしまうとき、私たちは実に不自由になります。
そうした執着を、そっと手を離して距離を空けることを、「手放し」と呼びます。
無理矢理に切り離すのではなく、その相手に感謝しながら、距離を空けるというイメージでした。
距離を空けたあとは、お互いが主体性をもって選び直すことができます。
そこから新しい関係性を築くこともできますし、いったん距離を置いたままにすることもできるのでしょう。
執着していると、お互いの関係性が硬直化します。
変わろうと思っても変わらず、離れようと思ってもうまくいかなかったりします。
それは、それまでの過去の関係性を、受け入れることができていないことを示しているといえます。
言いたいことが言えなかったり、自分にとってしんどい関係性であれば、それまでのことが消化できなかったりします。
あるいは、それが満たされた関係性であっても、そこに「自分だけ」という罪悪感を感じたりすることもあります。
昨日の記事では、そうした過去の自分自身を愛の視点で見つめることをお伝えしました。
きっと、いつだって、わたしはそのときの精一杯のやり方で、大切な人たちを愛そうとしてきた。
そう受け入れることができると、執着は少しずつ緩んでいきます。
2.過去の経験から未来を怖れる心理
過去の経験が、いま現在の私たちに影響をおよぼす心理は、執着だけではありません。
その他で代表的なものは、「怖れ」です。
私たちは、過去の経験から、未来を予測します。
「前にパートナーにこういう態度を取られたら、すぐにお別れになったな…」
という経験があれば、同じような態度を取られたら、お別れを想像してしまってネガティブな気分になったりします。
「プロジェクトのこの進み方だと、また自分だけにしわ寄せがくるな…」
という経験があれば、また自分一人でがんばらないといけないのか、と身構えてしまったりします。
こうした心の動きを、「怖れ」と呼んだりもします。
「心の深いところでは、『愛』か『怖れ』かの、いずれかしかない」
と言われたりもしますが、それだけ「怖れ」とは私たちにとって、根源的なものなのでしょう。
「怖れ」があると、私たちは身動きがとれなくなります。
高所恐怖症の方が、高いところで下を見ると、足元がすくんでしまうように。
いまいる場所から、動くことができなくなってしまいます。
これは、人の防衛本能のあらわれでもありますが、自分自身で動こうとするとき、主体的に人生を動かそうとするとき、「怖れ」は非常に厄介な存在になります。
しかし、「怖れ」の本質は、「まだ起こっていない未来への予測」です。
「予測」なのですから、まだ起こっていないことであり、実際に起きていることでもありません。
3.それまでの「怖れ」に感謝する視点
「怖れ」があると、なかなか新しい一歩が踏み出せなかったり、自分から動くことが難しくなったりします。
そうしたときに、無理矢理に「『怖れ』を乗り越える!」という気概を持ってするのは、あまりうまくいきません。
というか、「怖れ」が私たちの根源的な反応である以上、意志の力でなんとかしようとするのは、難しいですよね。
「お腹が減るのを、乗り越えよう!」
というのは、生理的に無理な話であるのと、同じかもしれません。
「甘いものを控えよう」なら、いけるかもしれませんが。
いや、それも難しいですよね笑
そうしたときに、「怖れ」を悪者として扱うのではなく、私たちの心の反応の一部として考えてみる視点がおすすめです。
なぜ「怖れ」があるのかといえば、「同じような痛い思いをしないため」という防衛の心のはたらきなわけです。
言ってみれば、それは私たちの心を守るためのものです。
その「怖れ」があったゆえに、回避できた痛みやトラブルも、あったのかもしれません。
そうした「怖れ」のはたらきによる恩恵に目を向けるのが、まずは一歩目です。
「いままで、私を守ってくれてたんだよね」
「おかげで、痛い思いをしないで済んだね」
そして、「いまの自分」に必要のない部分を、感謝とともに手放していくことができます。
「いまの私には、そこまでは必要なさそうだよ」
「いままで、ありがとうね」
「怖れ」もまた、私たちの心の反応の一つです。
それを悪者としてしまうのは、私たち自身の一部をそう見てしまう、自己否定につながってしまうかもしれません。
きっと、その「怖れ」も、過去には役に立ったことがあったのでしょう。
そのはたらきに感謝しつつ、そっとやさしく手放していく。
そうすると、どんな「怖れ」があったとしても、私たちは新し一歩を踏み出すことができます。
今日は、「怖れ」の心理と、その扱い方についてお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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