「投影」の視点は、私たちに大きな恩恵を与えてくれます。
たとえば、自分以外の誰かが問題を持っていると感じるならば、その問題は自分が向き合うべきものと見ることができます。
1.自己の確立と、投影
昨日の記事では、自己の確立と投影、というテーマでお伝えしました。
「あなたはあなた」であり、「あなたはわたし」でもあり。 - 大嵜直人のブログ
「癒着」というテーマからのつながりです。
そもそも「癒着」とは、ある相手との心理的な距離が近くなりすぎてしまう状態を指します。
それをくっつけているのが「罪悪感」です。
お互いに、「罪悪感」を接着剤にして、四六時中ぴったりとくっついてしまっている状態です。
その「癒着」をゆるめていくには、まず自分と相手との間に、明確な境界線を引くことが必要になります。
「あなたはあなた、わたしはわたし」という言葉に象徴されます。
あなたの問題はあなたにしか解決できないし、わたしを幸せにするのはわたし以外にはない、という意識です。
情の深い人ほど、「ちょっと冷たいんじゃないか…」と感じるかもしれませんが、それくらいでちょうどよかったりします。
お互いの距離感を適切に保ってこそ、お互いを選び直し、関係性を深めていくことができるのです。
さて、話しはそれで終わりかといえば、そうではありません。
そこで引いた境界線がすべてでは、ないんですよね。
私たちは、それぞれに独立した個の存在であると同時に、心の深い部分でのつながりを持った存在でもあります。
「あなたはわたし、わたしはあなた」という意識もまた、真実のようです。
昨日の記事では、そんなテーマをお伝えしました。
2.「投影」の3つのパターン
「あなたはわたし、わたしはあなた」。
この意識の根底にあるのは、「投影」の視点です。
心理学において最も重要かつ、大きなテーマですね。
「投影」とは、私たちが外の世界を見るとき、それは自分の心の内にあるものを映し出しているんだ、という見方です。
ごく単純に言ってしまえば、楽しみにしていたライブの日には世界がバラ色に見えるでしょうし、仕事でミスった上で贔屓のチームがボコボコに負けた日には、世界は灰色に見えるといった、そういうことです笑
もう少し詳しく見ると、「投影」には大きく分けて3つのパターンがあります。
- 自分の感情を、他人や物に投影する
- 過去に出会った人を、他人や物に投影する
- 自分の価値観や考えを、周りの世界に投影する
1は分かりやすいですよね。
自分が寂しいと思っていると、周りの人やドラマの中で寂しそうな人にばかり目が行ってしまうったり。
2も、よく起こるものです。
お父さんに抱いていた印象を、仕事の上司に投影したり。
お母さんに対して持っていた感情を、パートナーに投影したり。
これ、なかなか気づかないので、面倒なことになったりします。
もっと気づきにくいのが、3です。
価値観や観念、考え方、ビリーフといったフィルターを通じて、私たちは世界を見ています。
「困ったときには、誰か助けてくれるもの」という価値観や、
「大事なところで裏切られるから、人を本当に信頼してはいけない」という観念とか。
そういったものを投影して、周りの世界を見ているものです。
けれど、それってすごく気づきにくいですよね。
自分だけでは気づくのが難しいので、他人と接したり、カウンセリングを受けたりすることで、気づいていくものです。
この「投影」の考え方を突き詰めていくと、自分の周りの社会問題は、自分自身の感情がつくりだしている、と見ることもできます。
究極的には、この世界の創造主は自分自身である(見たいように見ているから)、という見方になるのでしょう。
そこまでの見方をするかは別としても、こうした「投影」の心理を念頭に置いておくことは、私たちに実に大きな示唆を与えてくれます。
3.相手の問題に見る、自分のなかの棘
たとえば、相手に何か問題が見えるとき。
「どうも、パートナーはお父さんとの葛藤が、いつも問題になるみたいだ」とか。
「いつもあの人は、周りの人を気にしすぎて、自分の意見が無いみたい」とか。
その相手と「癒着」していると、その相手を変えることで、問題を解決しようとします。
「癒着」していると、相手=自分なのですから、自分が問題を抱えていると、しんどいんですもん。
だから、なんとか相手を動かして、その問題を解決しようとしたくなります。
「ちゃんとお父さんと向き合って、許してあげればいいのに」とか。
「もっと割り切って、自分を大切にするべき」とか。
はい、この動きが、ロクな結果をもたらさないのは、皆さんご承知の通りです笑
その人の問題は、その人にしか解決できません。
それに、誰だって「あんたにはこんな問題があるから、こうして直せ」みたいな話をされても、聞きたくないですよね笑
「あなたはあなた、わたしはわたし」なのであり、そこは線を引くことが大切です。
じゃあ、自分にできることは、何もないのか?というと、そうではありません。
「投影」の見方を使えば、その相手に問題が見えるとは、どういう意味かを深掘りすることができます。
そうです。
相手のなかに見える問題は、自分のなかの問題を「投影」しているだけなんですよね。
はい、イヤですねぇ、ほんと…笑
そう見ると、「あなたはわたし、わたしはあなた」なわけです。
それは、「相手にこんな問題が見えるけど、それが自分の問題ではないだろうか?」という内省であり、フィードバックです。
そして、それが自分の問題だとしたら、そこでできることはいくらでもあるんですよね。
「自分はお父さんと向き合ってきただろうか?許しているだろうか?」
「自分は、自分自身を大切にしているだろうか?」
という問いかけです。
相手の問題に対して、自分ができることは何もないのですが、それを「投影」の視点で見ることができると、景色は一変します。
そして、もしそこで見えた自分の問題を解決することができたなら。
そうです。その解決できた景色を、周りに映し出すわけです。
すると、あら不思議、相手のなかの問題もまた、見えなくなるわけです。
解決するわけではなく、「見えなくなる」というのがポイントです。
「相手の問題は、自分にはどうしようもない」というのは真実ですが、「だから自分にできることは、何もない」というのは、間違いです。
その問題を自分のなかにある棘として向き合うことができると、目に見える世界は変わっていくのです。
今日は、相手のなかに見える問題は、自分のなかの棘を見せてくれているだけ、というテーマにしてお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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