週末の雨、というのは久しぶりのような気がしました。
土曜日の朝から降り続いた雨は、日付が変わってもまだ、名残惜しそうな霧雨となっていました。
冬の、雨。
そう聞くと「寒い×冷たい」で、冷え込みが大変になりそうな気もするのですが、それほど気温は下がらずにいてくれたようです。
放射冷却がないのと、湿気のおかげなのでしょうか。
日課のおさんぽができない私は、いつ止むのだろうかと、そわそわとしていました。
果たして、昼過ぎに雨は止みました。
急いで靴を履き、まだ水たまりの残るアスファルトの上を、私はいそいそと歩いていきます。
見上げれば、雲の切れ目から陽の光。
雲は流れて、東の空へと。
雲から雨になり、水たまりとなり、そしてどこかへと流れていきます。
この水たまりの水は、いつごろ降った水なのでしょうか。
土曜日からのできごとを、ずっと空から眺めていたのでしょうか。
水だけが、すべてを知っている。
そんなことを想いながら、水たまりを避けて私は歩きます。
見上げる空は、毎日その姿を変えるようです。
先週は、雲一つない透明感のある青空だった気がします。
それが今日は、分厚い灰色の雲から日差しが覗く空。
まったく違うように見えて、それでいて同じはずの空。
「同じ」とは、いったい何なのでしょうね。
昨日と同じ道、同じ川の流れ、同じ神社。
同じ鳥居をくぐって、少し歩くと、紅い花をみつけました。
紅梅。梅の花。
この冬、はじめて咲いているのを見たでしょうか。
いつもは2月の声を聞くころに、咲くような気がするのですが、ずいぶんと早い開花のようです。
そういえばニュースか何かで、梅の名所を管理している方が、「今年は早咲きになりそう」とおっしゃっていたことを思い出しました。
時候は大寒、まさに一年で一番寒いころ。
そんな時期に咲いた、小さな紅の花。
雨粒に濡れて、少し俯き加減のその花弁を、しばし眺めていました。
雨が上がったばかりの道を歩いたせいか、靴の中に水が入ってきたようで、つま先に水気を感じます。
その水気はただ、それほど不快なものではありませんでした。
一つの花びらは、咲いて、散っていきます。
時が流れれば、また同じ梅の花が咲くのでしょう。
そのとき、この小さな花弁のことを、私は覚えているのでしょうか。
また新しい梅の花が咲いたとしても。
この小さな花弁を、覚えておきたい。
そんなことを、想っていました。