さて早いもので、また日曜日がめぐってきました。
今日のスプリンターズステークスを皮切りに、いよいよ秋のG1戦線がスタートします。そして同じく今日、遠くフランスの空の下では、日本馬が未だ勝利したことのない凱旋門賞にサトノダイヤモンドが出走します。
欧州競馬の上半期のハイライトのレース、「キングジョージ」で並みいる古馬を一蹴した天才少女・エネイブルなど、ライバルは強烈ですが世界最高峰への挑戦を、同じ空の下で応援したいと思います。
今日は日本でも天才少女と呼ばれたダンスパートナーに寄せて。
稀代の名手・武豊を背に1995年のオークスを制したダンスパートナーは、強く、美しく、華があった。
フランス遠征、男馬に混じっての菊花賞挑戦など、武闘派情熱女子のネーミングを思い起こさせる戦歴。
一線級の混合競争で牝馬は勝てない。そんな思い込み、ブロック、常識にヒビを入れた存在。名伯楽・白井調教師には、それは思い込みだという確信があったのだとうか。
そのブロックは、のちにヒシアマゾン、エアグルーヴ、ウオッカ、ブエナビスタらの名牝の系譜によって、完全に取り払われた。
母として重賞ウイナーを輩出し、昨秋に鬼籍に入った。合掌。
2017.5.21
ダンスパートナー。
ちょうど私が競馬を見始めた頃に出てきた美しい少女でした。
武豊騎手を背に制したオークスのウイニングランは、初夏の陽気に輝いていました。その後フランスへ遠征し、牝馬(女馬)限定のG3・ノネット賞とG1・ヴェルメイユ賞に挑戦。帰国後も、通常であれば牝馬限定のエリザベス女王杯を目指すところを、牡馬(男馬)の出走する長距離レース・菊花賞に挑戦と、チャレンジ精神にあふれた戦績を残しています。
人間の世界において、スポーツ競技は男女の性差を考慮して別々に行われます。
100m走も、マラソンも、サッカーも、柔道も、カーリングも。
ところが不思議なことに競馬の世界では男女が同じレースを走ることがあります。牝馬は斤量(競走馬が走るときにつける重り)が軽くなる区別をつけていますが、同時に牡馬と牝馬が同じレースを走ります。これは騎手も同じで、騎乗するレースに男女の区別はありません。
私が競馬を見始めたころは、牡馬が走る大レースを牝馬が勝つことは難しいという空気がありました。天皇賞、ダービー、ジャパンカップ、有馬記念。そんな大レースを勝利した牝馬は戦前など、遥か昔に1頭いたかどうか・・・
しかし時代の流れなのか、大レースで牡馬を蹴散らす武闘派の牝馬が出現するようになりました。これも不思議なことに日本でもアメリカでも欧州でも、2000年前後から2010年あたりの同時期に。
日本ではエアグルーヴが天皇賞・秋を制し牝馬の時代を告げると、ウオッカは日本ダービーを制し、ブエナビスタは天皇賞・秋やジャパンカップを制します。
アメリカではゼニヤッタとレイチェルアレクサンドラという2頭の牝馬が主要レースを席巻し、年度代表馬を争います。
欧州でもザルカヴァが3歳にして無敗で凱旋門賞を勝ち、トレヴにいたっては3歳・4歳と凱旋門賞を連覇します。
女性の時代、という世相の表れなのでしょうか。
その時代に先鞭をつけたのは、ダンスパートナーの挑戦だったのでしょう。残念ながらその挑戦は勝利という目に見える形にはなりませんでしたが、その後の挑戦者たちに大きな影響を与えたように思います。
さて、今夜もまた凱旋門賞という前人未到の頂への挑戦があります。
その絶えることのないスピリットを応援してレースを見守ることにしましょう。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。