気づけば、断酒も3か月を越えていた。
ちょうど昨日もある知人の方と三人で会食だったのだが、私だけトマトジュース→ウーロン茶→ウーロン茶という流れで会食を終えた。
帰宅してから、書きたかった友人への文章を書いたりと、若干寝不足にはなったものの、一日が充実していたように思う。
人間の「慣れ」とは、恐ろしくも偉大なものだ。
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さて、このエントリーを何となく書き出してしまったので、断酒をしてからの変化ということで考えているが、「気分のアップダウン」が少なくなったように思うのだ。
「気分の変化」という定量的な測定が難しいものであり、また反証可能な実験ができないため、なかなか言い切ることが難しいのだが、あくまで私の個人的な感想として書いておきたい。
(この「断酒」のカテゴリーでは何度も書いているが、私は「断酒」を「何となく」しているだけで、その変化についていいことも悪いことも書いているだけで、決して
「みんな酒をやめた方がいい!」とか、
「断酒した方が絶対にいい!」というようなことを書くつもりは毛頭ない。
お酒は楽しいものだし、賑やかな場は好きだ。
ただ、経験としての断酒体験を書き残しておきたいだけである。)
お酒を飲んで酩酊すると、気分が高揚して楽しくなる。
量を過ぎなければ、これほど楽しい趣味もないと思う。
ところが、残念なことに私は量をセーブして「心地いいところ」で止めることがなかなかできなかった。
量を過ごした翌日の朝は、結構ヘビーだ。
食べ過ぎも加わって胃もたれしながら、深い霧のかかったような重い頭。
ひどいときには頭痛と吐き気・・・
休みならベッドに貼りついた状態で、あんなに飲まなければよかったという後悔を圧し潰すように寝返りを繰り返すし、
不幸にも仕事なら不自由な身体に鞭を打って仕事に向かい、何事もなかったように朝を迎えている世界への罪悪感を抱える。
前日の楽しさのキックバックのような、半ば生きるしかばねの状態。
梅雨空を一万倍くらい濃くしたような、どんよりした気分。
楽しい飲み会でも、一人で飲んでも、私はその翌朝によくそんな状態に陥っていた。
むしろ飲み会が楽しいほど、あるいは一人ごちて飲む酒と肴が美味いほど、翌日の反動はひどかった。
そして、その「どんより」状態になると、気分が平常運転に戻るまでが長いのだ。
これは気分という数値化できないものの話なので、他の人はどうか分からない。
けれども、私は確実にそうだった。
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もちろん、酒を飲まなくても気分が落ち込んだりすることもあれば、浮かれていい気分になることもある。
何かショックなことや、あるいは幸運なことが自分の身の周りで起こってもそうだし、そうしたことが何も起こらなくても、季節がめぐるように気分も昇ったり下がったりする。
ところがお酒を飲みすぎると、その気分の上下の自然なサイクルが乱れるように感じるのだ。
気分も感情も螺旋状のサイクルのようで、春もあるれば秋も夏も冬もある。
ただ季節と違うのは、それを味わい尽くさないと次の感情に移っていかない、ということかもしれない。
その感情が停滞している状況のときが、しんどいのだ。
低空飛行の気分のときは、そこから抜け出せないし、
とても幸せな気分のときは、いつしか感謝を忘れて傲慢になって痛い目を見る。
お酒を飲んだ反動で気分が沈むと、その気分や感情の自然なサイクルから外れてしまって、飲んだ都度、酔いが醒めるとまた絶不調から始めないといけないように感じるのだ。
絶不調から始まって、ようやく時間とともに気分が上がってきて体調もよくなってきたところで飲むと、またリセットされて翌朝絶不調からスタート・・・私がよく飲んでいたときは、そんなサイクルがあったように思う。
もちろん、それが悪い・いいの判断をつけたいわけではない。
おそらく私は、その沈んだ気分を潜在的に味わいたくて、その飲酒のサイクルを繰り返していたのだろうから、その時期の私にとって必要なものだっただけだ。
お酒をやめてから3か月が経つが、気分や感情が沈むことももちろんある。
けれども、それを引きずらなくなった。
気分が沈んだり、落ち込んだりしたときは、「なにかちょっとだけ」気分のよくなることをして重ねていくようになった。
いきなり100点満点の気分を狙うのではなく、5点や10点をちょっとずつ積み重ねるような感覚だ。
早めにぐっすりと寝る、
ストレッチをゆっくりとして身体をほぐす、
甘いものを愛でる、
空や路傍の花の写真を撮る、
昔好きだった音楽をかける、
ランニングや運動をする、
Youtubeでもふもふした生き物の動画を観る、
銭湯で足を伸ばして湯に浸かってサウナに入る、
スマホのストレージの写真を見返す、
公園などで自然に触れる、
好きな人と話す・メッセージを送る、
美しいサラブレッドが走る姿を眺める、
料理をしてSNSにメシテロをかける、
瞑想する・・・
誰もが持っている、少し気分のよくなる5点や10点の方法で十分なのだ。
そしてそれは、できるだけやった後にダメージや反動の少ないものがいい。
お酒は、一晩の気分を120点に上げてくれるかもしれないが、翌日以降にそのキックバックが利子を付けて返ってきて、気分が0点やマイナスになってしまうのかもしれない。
少なくとも私にとっては、そうだったようだ。
そんなことを、お酒をやめて3か月経つと思うようになった。
ただ、いま飲んだら適度なところで抑えられるのだろうか。
最近、それが少し興味深くもある。
気の置けない仲間たちと囲んだ、見事なアンガス牛のTボーンステーキ。
さすがにこのときばかりは、赤ワインを舐める友人たちが羨ましかった。
けれども、以前ならこの一皿が出てきた段で、ほぼほぼ酩酊状態だったのだが、いまは味わって楽しむことができるのが大きな恩恵のようにも思う。
炭酸水と楽しい会話で、十分にいい気分になるものだ。