昨日の春分の日を過ぎて、また一つ春らしくなってきたようだ。
少し前に立春がどうのと書いていたような気がするが、時の流れは早い。
立春、雨水、啓蟄、そして春分へ。
その陽気に誘われて、近所の川沿いを走る。
川沿いの桜も、もう待ちきれないといった趣で、その蕾を膨らませている。
頭上からは、鳥の声が響く。
七十二候では、「雀始巣(すずめはじめてすくう)」の時候。
雀たちも、巣をつくりはじめる、春。
それにしても、どの桜の木の蕾も、それぞれに膨らんでいて美しい。
ランニング途中の足を止めて、各々の蕾に魅入る。
足元を見れば、一面に広がるタンポポの黄色。
春は、黄色から始まる。
そんな趣深い言葉を、思い出す。
雪柳も満開。
その小さく可憐な白い花の集まりが、春の訪れを祝うようで。
あと少し。
美しさは、未完の中にこそ。
散り際も美しいが、咲く前もまた、美しく。
見上げていると、もう咲きそうな蕾もちらほら。
もう、あと1、2日で咲きそうな気がする。
それにしても、日本中でこれだけ多くの人が、その蕾を眺めている花もないのだろう。
そして、ついに。
白い、点のように、一つの蕾が花開かせていた。
今年、初めて見た、桜。
それは満開の桜とは違って、また趣のあるものだった。
季節の移ろいというのは、不思議だ。
日々流れていくものなのに、それを見ているときはいま、ここに留まることができる。
いま、この瞬間にしかない、令和二年の、春。
その瞬間を、味わい尽くそう。