「おぉ、すごいな、このVtuber…Twitterのフォロワーが10万人もいるぞ」
「あの…いちおう、『きんむじかんちゅう』ですが…」
「固いこと言うな」
「まあ、そういうアタシもトレンド見てますが…で、何て子ですか?…へえ…」
「全く知らなかったけど、10万人のファンを持ってるって、すごいよな」
「…まあ」
「なんだ、反応が薄いな、そんなの知ってて当たり前です、ってか?」
「…いえ、アタシの方がフォロワー多いんで…」
「は?」
「嘘ですけど」
「いや、妙にリアリティのある嘘つくなよ…」
「やっぱりホントです」
「どっちだよ、まったく…それにしても、なんかSNSって、ここ10年か15年くらいの間に、えらく市民権得たよなぁ。以前はやってる人と、そうでない人がすっぱり分かれてるような記憶があるけど」
「そんなもんですかね」
「あぁ、いまは名刺代わり、のような感があるなぁ」
「そうですかね?なんか、投稿するの好きな人と、見るだけが好きな人と、結構分かれているような気がしますけど」
「あぁ、それは確かにあるかも。みんな一回りして、自分なりのSNSとの付き合い方や、距離感みたいなのができてるのかも」
「ええ。そういえば、なんていうか、承認欲求が漏れ出てる人とかって、少なくなったような気がします」
「いや、承認欲求は人が生きてる限り、なくならんだろう」
「それはそうなんですけど、あるじゃないですか。感覚的に煩い投稿。アタシ、そういうの見ると、そっとフォロー外しちゃいます」
「まあ、その感じ方は、人それぞれだろうけど」
「でもインスタとかも、いつの頃からか、リアクションの数を投稿者以外には表示しなくなりましたよね」
「そういえばそうだな」
「人類がSNSに慣れてきたのか、それとも承認欲求を煽っても反応する人が少なくなったのか…」
「まあ、なぁ。『世界中の人たちとつながれる』って言っても、なんか『つながらなくてもいい人とつながってしまう』デメリットの方が、大きいって考える人もいそうだしな」
「あー、たしかに。広告とかエロ系のアカウントとか、鬱陶しいですもんね」
「そうそう。結局、つながったとしても、関係性を維持する事って難しいよな。人が日常的にコミュニケーションを取れる交友範囲の最大数は150人前後っていう研究も聞いたことあるし」
「エ?150人…多すぎないですか…?アタシは10人くらいかな…」
「まあ、それは人それぞれだとは思うけど」
「人それぞれって、さっきからそればっかり」
「いや、大事なことだよ、SNSには。『人それぞれ』って思っておかないと、やっててしんどいよ」
「あぁ、『いいね』の数とか、超気にしてそうですもんね」
「…うるさいよ」
「アハハ、図星」
「気になっちゃうのが、人情ってもんだろ」
「まあ、そうですけど…でも、SNSの『いいね』の意味って、なんか変わってきたような気がするんですよね」
「え、変わってきたって?」
「なんか、うまく言えないんですけど。字面通りの『いいね』から、生存報告、というか」
「生存報告?」
「ええ、『ここにいるよー』って」
「あぁ、なるほど」
「相手がどんな意味で『いいね』を押したか、分からないけど」
「うん」
「けど、『いいね』を押したあなたが、そこにいたことが、アタシは嬉しいんです」
「なるほど…哲学的だな…」
「そうですかね?」
「あぁ、それこそ、SNSの当初の『つながる』っていう目的に戻っているのかも」
「そうかもしれないです」
「うーん、深いな」
「そうでもなければ、10万人からのフォロワーなんてできないですよ」
「ホントにそんなにフォロワーいるのか…」