大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

梅の香、東風とともに。

寒の戻りはありつつも、空気の流れはどこか緩さを含み。

時に、土脉潤起・つちのしょううるおいおこる。
真冬の間に凍てついていた土も、雪解け水により湿り気を帯びてくるころ。

山から流れ出る雪解け水は、栄養分をたっぷりと含んだ生命の水でもあると聞く。
いろんなものが、少しずつ目覚める時候。

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その通りに、どこか土の色も暖かく。

そして、気づけば梅の花が、咲き始めていた。

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雪と白梅というのは、先人たちがこぞって描いてきた風景ではあるが、やはりこの時期の澄んだ空と、白い花弁はとても合うように思う。

嬉しくなり、1年ぶりのその香りを愉しむ。

先週に見たときは、まだ蕾が固く閉ざされていたように思ったが、咲くときはあっという間に咲くものだ。
そして、それはいつも正確に、忘れることなく、咲く。

東風吹かば にほひおこせよ 梅の花
あるじなしとて 春な忘れそ

学問の神様が詠んだ詩を、思い起こす。
その神様が祀られている、近所の神社にも足を伸ばして、手を合わせてくる。

去年も、梅の花の開花とともに、そんな参拝をしたような気がした。

時はめぐる。円環を描いて。

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帰り道、川沿いの桜並木の蕾は、まだ固く。
もう少し、時間の助けが必要そうだ。

それでも、時が来れば咲くのだ。

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この青い空が、もう少しぼんやりして霞がかるころ。
また、薄いピンク色をした無数の花弁が、空を埋め尽くすのだろう。

そんなことを、想像しながら。
まだ風の冷たい、川沿いを歩く。