早朝の真清田神社を訪れる。
手帳を見てみたら、ちょうど一月ぶりの訪問だった。
先月は雨だったが、今日も分厚い雲が空を覆っていた。
それでも、吹く風は穏やかで、もうどこにも冬の凛とした冷たさはない。
一年前の春。
緊急なんとかが発出され。
もっと重苦しい空気だったころに、ここを訪れたことを思い出す。
空は青く、春の麗らかな陽気なのに。
街の空気は重く、要・急な仕事であっても、出歩くことに罪悪感を覚えた。
不要不急の。
そんな枕詞が、どこにでもついて回った。
一年経って、考えてみれば。
人の生きることはみな、不要不急なことばかりではないかと思う。
あの一年前の春、桃の花が、わたしを慰めてくれた。
その桃の木は、まだ芽吹いていかなかった。
これから、生い茂るのだろうか。
一年という、季節のめぐりを想う。
境内を歩いていると、薄桃色の花びらを見つけた。
切れ込みのある花びらの形。
梅でも桃でもなく、桜だ。
今年はじめての、桜。
その薄いピンクの色を、しばし見上げる。
この薄いピンクには、青い空の色がよく似合うのだが。
今日の曇り空も、またいいのかもしれない。
桜の、薄いピンク。
もし、この淡いピンクの色が、もう少し濃かったら。
誰の心の中にでもある春の記憶は、また違った情感をともなうように思う。
何年前だっただろうか。
いつか、そんなことを書いたことを思い出す。
めぐりめぐって。
いまも、まだわたしは書いている。
この、桜の薄桃色について、書いている。