2021年、中山グランドジャンプ。
史上初の同一重賞6連覇を狙った、絶対王者・オジュウチョウサン。
人の5倍~6倍の早さで生きるといわれるサラブレッドの旬は短い。
そんな中で同じ重賞を5連覇するのは、途方もない偉業である。
平地では2戦して8着、11着と凡庸な成績だったが、障害入りしてから徐々に力を伸ばす。
2016年、中山グランドジャンプでの覚醒。
2017年、中山大障害でのアップトゥデイとの死闘。
2018年、グランプリ・有馬記念への挑戦。
2019年、「オジュウ包囲網」を打ち破った中山グランドジャンプ。
どれもが記憶に残る、オジュウチョウサンの足跡。
こうした名馬をリアルタイムで見られることは、同時代に生きられたことに感謝したくなる。
4月17日、J・G1 中山グランドジャンプ。
雨は心配されたほど激しくならず、良馬場での発走となった。
絶対王者・オジュウチョウサン、そして昨年末の中山大障害で初タイトルを獲ったメイショウダッサイが人気を分ける。その他にも、いずれも重賞以上の実績のある6頭で争われることとなった。
しかしタガノエスプレッソに騎乗予定だった平沢健治騎手が、午前中の第4レースで落馬負傷。テン乗りの植野貴也騎手に乗り替わりになった。
そのタガノエスプレッソが、序盤からレースを引っ張る展開となる。
力のある同馬が引っ張ったことで、レースは底力の問われる形となった。
オジュウチョウサンは、序盤はタガノエスプレッソと競る場面もあるなど、従前同様に積極的に前目からの競馬だったが、4コーナー前で失速。
そこには、いつもの絶対王者の姿はなかった。
盛者必衰。
世の理ながら、それはいつも寂しさをともなう。
力勝負のレースを押し切って勝ったのは、前年の中山大障害の覇者・メイショウダッサイ。前年暮れの大一番からの連勝で、名実ともに障害の現役最強の座に就いた。
前年暮れの中山の王者の、帰還。
そして、オジュウチョウサンは直線に入ると、最後の力を振り絞ってマイネルプロンプトを差し切って、掲示板を確保。
交錯する時代と、そして優駿たち。
全人馬、無事に帰還したことに、拍手を贈りたい。