時に清明。
虹始見、にじはじめてあらわる。
春の深まりとともに、大気は湿り気を帯び、虹が見られることが多くなるころ。
そんな時候の通り、今日はぽつりぽつりと冷たい雨が落ちる日だった。
残念ながら、虹を見ることはできなかったが、季節は歩みを止めず。
ただ、流れていく。
名残惜しい桜は、もう新緑の葉をめいっぱいに広げ。
それと入れ替わりに、例年より少し早いツツジが、路傍で咲き乱れる。
あるいは、青系統の色を差した花たちを、見かけるようになる。
見たいもの。
見たくないもの。
そこにあったもの。
失いたくないもの。
いとしいもの。
忌むべきもの。
人の思惑とは関係なく、時は流れ、季節はめぐる。
ただ現れ、ただ在る。
そして、ただ過ぎ去っていく。
季節のめぐりを愛でることは、自分を愛ることに似ている。
ただ、目の前にあるものを、そのままにしておく、ということ。
ただ、
桜が散れば、ツツジの咲き方を愛で。
陽が沈めば、浮かぶ月の輝きに心を寄せ。
雨が降れば、虹を心待ちにして。
同じように、
悲しみが訪れれば、温い涙に暮れ。
寂しさがやってくれば、人の温もりを想い。
怒りを噴き出れば、その熱を隠さず。
目の前にある日常の細部に、すべてが宿る。
それを愛することは、世界を、そして自らを愛すること。
ただ、そのままに。
流れるものを、そのままに。