飽きもせず蝉取りに行く息子について、また川沿いの道を歩いていました。
蝉時雨が降りそそぐ中、見上げれば木漏れ日が。
夏の力強い陽射しが、勢いよく生い茂る桜の葉の間から、差していました。
桜が満開だった、春の日。
その下を歩いていたことを、思い出していました。
よく晴れた、あの春の穏やかな日差しの下。
すべての桜の花弁が、それを見上げる私に向いて、微笑んでいました。
なぜ、そんなにも愛を向けてくれるのか。
不意に頬をつたう涙とともに、その桜を見上げていました。
そんなことを、思い出す盛夏の日。
いつか、今日この日も、思い出に変わるのでしょうか。
それもまた、うれしく、また、せつなく。