大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

空、春色。

春分過ぎて。
今年は桜が早いようで、もう春本番の感がある。

桜もそうなのだが、空の色の移り変わりが、季節の入れ替わりを感じさせる。

凛として、どこまでも澄んでいた空の色。
冬の間の、そんな空の色は、もうどこにもなく。

見上げれば、輪郭のぼやけたような色が、広がっている。
空自体の色もそうだが、雲の輪郭もまた、ぼんやりとあいまいなままだ。

冬の空が、極細のボールペンで書いたような陰影だとするなら、
春のそれは、淡い色を重ねた水彩画だ。

輪郭はにじみ、境界線はどこかあいまいだ。

それは、春の情景とどこか似ている。

出会いと別れ。
死と再生。
懐古と勇気。
葛藤と愚直。

春は、いつもその境界線の上を、ぼんやりと歩く。

どこかへ行くようで、どこにも行かない。
そんな、季節。

冬の凛とした空は、少し痛みと似ている。
春の空は、日々、その痛みを和らげていくようにも見える。

もしそうだとしたら、癒しとは、輪郭をあいまいにすることと言える。

輪郭を、あいまいにする。
正誤善悪、過去と未来、男と女、過程と結果、上と下、天と地、日と月。

うつろいゆくもの、めぐるもの。
その二つの間で、揺れている。

あいまいなままでいる。
そのままでいる。

春色の空。
見上げながら、癒しについてそんなことを想う。

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