降り続く雨に、夏の終わりもどこへやら。
季節が逆戻りして、梅雨に戻ってしまったかのような、そんな感じもする長雨です。
いつからか、雨の時は雨の時にしか見られない景色を探すようになりました。
晴れの日は、晴れの日の。
曇りの日は、曇りの日の。
雨の日は、雨の日の。
そんな、風景を。
木の葉に滴る、雨の雫。
その雫に映し出される、反転した世界。
しばらく、その世界を眺めていました。
前後左右が、反転した世界。
その雫の中の世界に入ったら、どんな感じがするのだろうか、そんなことを考えていました。
けれど、よくよく考えてみれば。
鏡に映っているのは、反転した自分の姿です。
私の左目の瞼には、縫い跡があります。
幼い頃、近所の公園の飛び石を跳び損ね、頭からその飛び石にぶつけた際に、つくった傷跡です。
何針か縫う、大きな怪我だったように覚えています。
その傷も、もはや私のアイデンティティの一部なのでしょう。
けれど、鏡でよく見るその傷は、実は自分の認識している場所とは、左右が反対の場所にあるようです。
左右が反転した世界。
ほんとうの自分の姿とは、実は自分が思っていることと反対の姿にあるのかもしれません。
ぽたり、とその雫が垂れて落ちました。
それと同時に、また小さな雫が、垂れてきました。
また、反転した世界が、映し出されていました。