大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

「許し」のプロセスの最後は、自分自身を許すこと。

「許し」は、ある特定の誰かやできごとを対象にして始まります。

しかしそうしたプロセスは、すべて自分自身を許すことを導いてくれているのかもしれません。

1.「許し」のプロセス

昨日の記事では、「許し」のプロセスについてお伝えしました。

感情的理解の先にある「許し」、その意味とプロセスについて。 - 大嵜直人のブログ

カウンセリングのなかでも、中核的なテーマになることが多いのが、「許し」です。

昨日は、その「許し」にいたるプロセスを見ていきました。

大まかに分けて、「許し」には4つのプロセスがあります。

  1. 感情の解放
  2. 感情的理解
  3. 感謝
  4. 恩恵を受けとる

まず、自分自身の心に余裕がなければ、相手を「許す」ことは難しいものですから、自分の心をケアします。

これが、「感情の解放」です。

その相手やできごとに対して、思っていることや感じていることを、解放します。

怒り、憤り、時には恨みつらみなんかも出てくるかもしれません。

そうした感情を解放していくと、自分の心に余裕を持つことができます。

そうすることで、はじめて相手のことを考えてみるわけです。

「もし、自分が相手の立場や状況だったとしたら、どのように感じるのだろう」

そのように、感情ベースで相手のことを理解しようとすることが、2つ目のステップです。

この「感情的理解」が進むほどに、

「あの人と同じ立場だったら、自分も同じことをしたかもしれない」

そんな風に感じることが多くなっていきます。

すると、相手やその出来事に対して、ふっと「感謝」の念を持つ時間ができてきます。

「あのできごとがあったからこそ」

そう感じられるようになるころには、実に大きな「恩恵」が、私たちの周りに見えるものです。

「許し」は、そんなプロセスを歩んでいくことが多いものです。

2.なぜ「許し」が必要なのか

一般的な語義だと、「(相手のために)許してあげる」というニュアンスがありますが、心理学における「許し」は少し意味合いが異なります。

心理学における「許し」とは、「自分自身のために」するもの、という点が根本にあります。

誰かを許していないと、私たちは幸せを感じることが難しくなります。

相手を責めることの罪悪感。

そして、自分が不幸になることで成し遂げようとする、その相手への復讐。

はい、なんだかドロドロとしてますね笑

そうした心理が、自分自身が幸せになることを妨げます。

「許し」は、そうした罪悪感や復讐の心理から、私たちを解放してくれるものです。

それゆえ、「許し」とは、相手のためにするものではなく、自分自身のためにするものといえます。

相手のしたこと、あるいは起こったできごと。

それに対して、私たちは何からの反応をします。

そして、その相手やできごとに心を囚われて、そればかり見て、自分の都合のいいように期待してしまったりするものです。

「あの人が謝ってくれたら」

「あのできごとが、起こらなかったら」

しかし、そうした期待が叶うことはないのは、ご存知の通りかと思います。

「許し」は、そうした囚われから私たちを解放してくれます。

「許し」が進むほどに、私たちは自分自身の人生の手綱を取り戻していくことができます。

3.誰を許すのか

さて、この「許し」ですが、その対象は移り変わることがあります。

昨日の記事でも書きましたが、「許し」のプロセスはいったん恩恵を受けとったら終わりではありません。

また新たな感情を解放して、より深いレベルでの「許し」のプロセスに入っていきます。

それは、延々と続く螺旋階段を昇るようなものかもしれません。

そうしたプロセスの中で、「許し」の対象が変わっていくことがあります。

最初は、いまのパートナーだったのが、前にお付き合いしたパートナーになったり。

あるいは、幼いころの学校の先生になったり、祖父母になったり。

はたまた、父親や母親になったり。

「許し」の対象というのは、変わっていくものです。

こうした「許し」の対象の変遷は、私にある文章を思い起こさせます。

細部を見ることは、つねに癒しをもたらしてくれる。

それは特定の痛み(恋人を失う、子どもの病気、打ち砕かれた夢など)への癒しとしてはじまるが、最終的に癒されるのは、すべての痛みの根底にある痛みである。

リルケが「言葉で言い表せないほどの孤独」と表現した、誰もが抱えている痛み。

注意を向けることによって、私たちは人や世界とつながる。

 

ジュリア・キャメロン著

「The Artist's Way(邦題:ずっとやりたかったことを、やりなさい)」(サンマーク出版)より

「癒し」とは、ある特定の痛みに対してのものとしてはじまります。

しかし、最終的に癒されるのは、すべての痛みの根底にある痛みである、と。

「許し」では、その最後にいるのは、やはり「自分自身」なのでしょう。

もっとも許すことが難しいのは、自分自身だといわれます。

自分自身を許すことができたとき、私たちは世界を許すことができます。

「許し」のプロセスの最後は、自分自身を許すこと。

許せない相手やできごとも、その自分自身を許すためのプロセスを与えてくれているのかもしれません。

今日は、「許し」のプロセスの最後は、自分自身を許すこと、というテーマでお伝えしました。

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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