大嵜直人のブログ

文筆家・心理カウンセラー。死別や失恋、挫折といった喪失感から、つながりと安心感を取り戻すお手伝いをしております。

秋陽に満ちた淀で、記憶と情感にふける日。

青信号が見えると、急いで横断歩道を渡ろうとしてしまう癖があります。

昔から、そうだった気がします。

別に赤になったところで、また青に変わるのを待てばいいのですが。

でも、なんだか走ってしまうのです。

目標に早く近づきたいのか、それとも何かに追われているのか。

それは分からないのですが、ただ、青信号を見ると「急がなきゃ」とばかりに、速足になってしまうのです。

淀駅の改札を出ると、速足になっている自分に気づいていました。

さながら、青信号を見たときのように、無意識に。

黄金色の陽光が、競馬場までの道を照らしていました。

急に気温が下がった週末でしたが、汗ばむくらいの陽気。

それでも、秋の陽光はどこかやさしく、私を包んでくれるようです。

右手を向けば、京都競馬場のスタンドが見えています。

淀を訪れるのは、何年振りだったでしょうか。

小雨降るなかで見た、老雄・カンパニーの豪脚か。

それともスノーフェアリーの鬼脚だったか、あるいはオルフェーヴルの三冠だったか。

歳を重ねると、前後関係が分からなくなるのは、私だけではないと信じたいものです。

そのときの自分の心情は、なんとなく覚えているのですが、時系列では分からなくなります。

「分からなくなる」ということは、それが前であろうと、後であろうと、些細なことなのかもしれません。

速足で入場門をくぐり、場内へと、

リニューアルした淀は実に綺麗になっていて、記憶の中のそれと一致しないものでした。

それでも、多くの歓声がこだまし、人々の心を揺らす走りが、あった。

その積み重ねられた場所。

それは、変わりないように思います。

まずは、変わらず残っているライスシャワーの碑と、馬頭観音に手を合わせます。

全人馬、無事にゴール板を駆け抜けることができますよう。

あまり寺社仏閣で願いごとをしないのですが、その願いだけは、競馬場を訪れるたびに毎回祈るものです。

それにしても、秋晴れの気持ちいい空。

この空を見上げて息を吸うだけで、満たされるような。

その陽気の下で、ここを訪れた時間のことを、思い出したりしておりました。

せっかくなので、記念撮影をしてもらいました。

この日は、クラシック三冠最終戦、菊花賞デー。

競馬場らしからぬスーツ姿は、実はこの日は友人の結婚式に出席するため。

そのため、午前中のレースだけを楽しんで、後ろ髪を引かれながら、淀を後にして式場へと向かいました。

メインが見られないのは残念でしたが、実に満たされた一日になりました。

リニューアルした京都競馬場、また訪れたいと思います。