見えないもの、あるいはそこに存在していないものに想いを馳せる力を想像力と定義するなら、それは人に与えられた素晴らしい能力の一つで、生きることを豊かにしてくれます。
突拍子もない想像もまた、人生を豊かにしてくれる一つの翼のようです。
2014年、菊花賞。
金曜日の前々日販売で、異変が起こる。
戦前、中心視されていたのはダービー馬で前哨戦の神戸新聞杯を制していたワンアンドオンリー。その対抗としては、同神戸新聞杯2着・サウンズオブアースや、春の実績馬・トゥザワールド、夏の上り馬・ゴールドアクターが続いていると目されていた。
ところが金曜日発売を終わって断然の1.2倍の1番人気に立ったのは、トーホウジャッカルだった。
東日本大震災その日に生を受けた彼の馬は、デビューから菊花賞まで僅か149日、500万下を勝って神戸新聞杯3着で何とか菊花賞出走権を得た伏兵だった。加えて、馬主・調教師・生産者全てG1未勝利。ヤネは酒井学騎手。
金曜日の午後、この伏兵に大口単勝をブチ込んだヤカラがいたことが後に分かった。その額、なんと200万円。
日曜日、果たしてトーホウジャッカルはレコードタイムの3分1秒0で走破し、菊花賞制覇を果たす。
最終的にトーホウジャッカルのオッズは3番人気の6.9倍に落ち着いたが、そのヤカラが手にしたのは、1380万円。
のちに「ジャッカルおじさん」と呼ばれたその正体は、一体どんなヤカラだったのかと想像したくなる。
私の予想は、
◎ 200万をご祝儀として突っ込んだジャッカルの馬主の関係
〇 とんでもないお金持ちの酒井騎手のマニア
▲ 自分の予想に殉じて7桁の金を投げ打てる勝負師
△ 未来からデータブックを持ってデロリアンに乗ってやって来たビフ・タネン
もし競馬の神様という方がいらっしゃったとしたら、いつか聞いてみたい。▲が一番ロマンがありそうだが、大穴の△あたりも面白そうだ。
2017.10.22
サラブレッドが走るという不確定要素が多い競馬に、200万円を投じることができる人物とは、どんなヤカラだったのでしょうか。
想像するだにワクワクします。
もし△だったら、近い未来にビフ市長の治めるカジノ・シティが出現するのかもしれません・・・
と、こんな他愛もない想像力のお話も、酒の肴には最高ですね。
揺れる柳に幽霊を見たり、
流れる雲に竜を見たり、
想像力は私たちの生を豊かにしてくれます。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。