「期待」も「信頼」も、私たちの心のなかには両方あるものです。
そのなかでも、「信頼」を増やしていくための考え方について、お伝えします。
1.似て非なる「期待」と「信頼」
昨日の記事では、「期待」と「信頼」の違い、というテーマでお伝えしました。
相手を「信頼」すること、「期待」することは、何が違うのだろうか? - 大嵜直人のブログ
「期待」と「信頼」。
どちらも、自分以外の相手に心を寄せることには変わりはないのですが、そのありようは大きく異なります。
「期待」とは、自分の欲求の表現方法を変えたものを指します。
相手に依存的になっているとき、私たちは自分の欲求を相手にぶつけます。
「こうしてほしい」「ああしてほしい」といった具合に、要求するわけです。
しかし、それは相手があることなので、相手がその要求に必ず応えてくれるとは限らないものです。
そうしたとき、私たちの心は依存から自立へと変わっていきます。
つまり、他人に要求することをせずに、「こうなったらいいな」と密かに願うようになります。
これが「期待」であり、自立の典型的な症状といえます。
相手や現実の、ポジティブな部分しか見ていない状態です。
一方で、「信頼」とは、いまの現実を受け入れたうえで、相手に心を寄せることを指します。
「こうなったらいいな」と願う点では、「期待」と似ていますが、そうならなかったとしても、その結果や現実を受け入れることができます。
ネガティブな部分も受け入れたうえで、そうしているわけです。
だから、その結果や現実に、自分の価値を疑ったり、揺さぶられたりしないものです。
それゆえ「信頼」とは、自分と深くつながっている状態と見ることもできます。
「期待は裏切られるが、信頼は裏切られることはない」という格言がありますが、そうしたことを指しています。
2.どちらもあるのが、人の心
「期待」と「信頼」。
こうして見ていくと、「そうか、『期待』はいけないから、『信頼』すればいいだな」と感じるかもしれません。
それも決して間違いではありませんが、そんなにきれいに割り切れたりしないのが、人の心だったりもします。
言ってみれば、「信頼しているけれど、一部には期待もある」とか、「7割期待だけど、3割くらいは信頼している」といった、まだら模様のような状態が、私たちの心と言えるのでしょう。
そしてそれは、時間とともに変わっていくものであります。
それはどこか、天気と似ているようです。
晴れているなかにも、雲があったり。
雨が降っていたと思ったら、陽の光が差し込んできたり。
これは「晴れ」、これは「曇り」といったように、完全に分けられるものでもなく、その連なりが空模様をつくっています。
(もちろん、気象情報なんかでは、「晴れ」や「曇り」を定義しているのでしょうけれども)
だから、あまり「期待はあかん…期待はあかん…」と強く禁止したりするのも、ある意味でしんどいものです。
「期待」も「信頼」も、どちらも自分のなかには、ある。
それを受け入れたうえで、どちらを選んでいくかは、自分次第であるととらえるくらいが、いいのでしょう。
3.「期待」していることに気づくことが一歩目
とはいえ、「期待」をしていると、自分がしんどいものも、また事実です。
なんたって、「期待は裏切られる」の格言の通り、自分の思い通りにならないことで、落胆したりするわけですから。
ですから、「期待」は誰のなかにもあるものとはいえ、それを手放していくことができると、「信頼」の方に心を向けることができます。
そのためには、まず自分が「期待」していることに気づくことが、一歩目です。
「期待」とは、欲求の表現方法を変えたもの、と冒頭に書きました。
そうすると、自分の想いが満たされなかったり、相手の言動に落胆したりしたときには、チャンスなわけです。
ネガティブに感じたことと、向き合うと言えるでしょうか。
そこで、なぜ自分が満たされないと感じたのか。
なぜ、相手の言動に落胆してしまったのか。
そこで出てくる、自分の本音と向き合うわけです。
それは少ししんどいことかもしれませんが、そこと向き合うことができると、
「あぁ、自分は勝手に無茶な期待をしていたのかもしれない」とか、
「よく考えたら、相手にもまた事情があるんだな」とか、
自分の欲求以外にも、目を向けることができるようになります。
そのうえで、相手に対して心を差し向けることができたならば、それはきっと「信頼」と呼べるものに変わっていくのでしょう。
なんにせよ、いきなり「期待」を「信頼」に変えましょう、といっても、難しいものです。
まずは、自分が「期待」していることに気づくこと。
そのためには、自分の感情と向き合い、丁寧に扱っていくことが、とても大切なことです。
今日は、「期待」を「信頼」に変えていくために、というテーマにしてお伝えしました。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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