今日はある音楽に寄せて。
パフ・ダディの名曲、「I'll be missing you」です。
ヒップ・ポップはあまり聴かない私なのですが、この曲を知ったのは収録されているアルバム「No Way Out」が実家に転がっていたからです。
中学生か高校生の頃だったでしたでしょうか。
さしずめ今でいうとYou Tubeの関連動画で知った、くらいの感覚でしょうか。
アルバムの中でも、不思議とこの「I'll be missing you」に惹かれて、よく聴いていました。
最近思い出してまたよく聴いていますが、調べてみるとこれは1990年代のアメリカのヒップ・ホップ界のスター「ノートリアス・B.I.G」という方の追悼曲なのですね。
1990年代に人気を二分したふたりの偉大なラッパー、パフ・ダディとノートリアス・B.I.Gのそれぞれ所属していたコュニティが対立。
結果的にノートリアス・B.I.Gともう一人の有能なラッパーが銃撃され亡くなるという悲劇によって終息。
その後パフ・ダディはノートリアス・B.I.Gの妻と、B.I.Gを追悼するこの曲をリリースしたそうです。
どうも昔から私の心惹かれるポイントは「別離」であったり「寂しさ」であったり「つながり」のようです。
まあ、単にこの曲が名曲だから惹かれただけ、ということもあるでしょうけれど。
さて、曲の方ですが、歌い出しがココロに沁みますよね。
その中の「miss」という単語が、この曲の雰囲気をつくっているように思います。
改めて辞書を引いてみると、
1.(狙ったものを)取りそこなう、(乗り物に)乗り損ねる、(時間に)間に合わない
2.(機会などを)逃す、(~し)そこなう
3.(事故などを)免れる、避ける
4.(~が)ない/いないのに気づく、(~が)ない/いないので寂しく思う、惜しむ
などといった意味があるようです。
もちろんこの曲の中での意味は「あなた(=B.I.G)がいなくなって寂しく思う」ですが、不思議なのは「miss」に「乗りそこなう、間に合わない、取りそこなう」という意味があることです。
この一つの動詞が持つ複数の意味に何か関連があるのか、私は言語学に詳しくないので分かりませんが、「もしも」関連があるとすると、こんな仮説が考えられませんでしょうか。
「寂しい」というのは、誰かがいなくて寂しいと感じるけれど、実は何かに間に合わなかったり、乗り遅れたりすることが、実は寂しいのかもしれない。
その何かって?
それは、「死」というもの。
「死」というとネガティブなイメージだったり、あるいは葬式=死者を弔うという行為はいろんな宗教や民族の持っているアイデンティティが最も強く出る場面ではあります。
死後の世界や輪廻があるのかどうかはわかりませんが、私はそうした世界はあるように思うのです。
こうして現世に生を受けて息をしていること自体がイレギュラーな事態であり、もしかしたらあの世なのか天国なのかお空なのか涅槃なのか、いろんな表現があると思うのですが、実はそっちが心か魂なのかの「ふるさと」なのかもしれません。
だから、今生ではもう会えない別れがあり、誰かの不在を感じると「miss」という寂しさの感情が動くのですが、それはもしかしたら「ふるさと」に帰るのに「乗り遅れた(=miss)」から感じるものかもしれません。
もちろん、何の論拠もありません。
けれど、そんな見方を少ししてみるだけでも、「寂しさ」や「別離」というものを違った見方ができるようになる気がします。
付け加えるなら、英語で人が亡くなった寂しい気持ちを伝えるのは、「will」という意思や未来を志向する単語を使うのが、それを指し示していると思うのです。
I miss you. あなたがいなくて寂しい(距離的・物理的な不在=生きている人を想う寂しさ)
I will be missing you. あなたが亡くなって寂しい(時間的な不在=故人を想う寂しさ)
さて、どうでしょうか。
まあそんなことを考えなくても、この曲は心に沁みますよね。
さて、今日もお越し頂きましてありがとうございました。
また少し雨雲が広がってきていますが、そちらはいかがでしょうか。
どうぞ、ごゆっくりお過ごしください。