いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました。
先日まで名古屋市美術館で開催されていた「モネ それからの100年」展を観てきましたので、少しそれに寄せて綴ってみたいと思います。
絵心はあまり(というかまったく)なく、美術史に詳しいわけではないが、美術館にたまに足を運ぶ。
絵を観に行くというより、その空間が好きなのかもしれない。
よく目録と一緒に設置されている長椅子に腰かけてぼーっとしてみたり、企画展の中でお気に入りの1枚を探したり、その絵葉書を買うことが楽しいというのもある。
そんなこんなで、名古屋市美術館に「モネ展」が来ると聞いて行こうと思っていたが、結局足が向いたのが最終日の前日だった。
白川公園を通ってようやく美術館に着いたのはいいが、閉館が5時というのは計算外だった。
時計はすでに4時。
最近こういううっかりが増えてきた私は、緩んでいるのか年なのか分からないが、とりあえず入館することにした。
しかし最終日前日の土曜日の閉館前ということで館内は混雑しており、順路には列ができていた。
いったん順路通りに並んでいた私だったが、遅々として進まない列に、「あ、この見方はイヤだ」と思い、先に最後までさらっと流して眺めていった。
その中で、最も目に留まったのが「霧の中の太陽」というモネの1904年の作品だった。
そして幸いなことに、その絵の前に長椅子が設置されている。
閉館までここでこの絵を眺めていよう。
そう思い、椅子に腰かけてぼーっと絵を眺める。
人だかりのような行列が前にあるため、絵の半分くらいしか見えなかったが、それでもいい。
この絵と一緒の空間で、すこ目を閉じてみよう。
そうしていると、4時45分を過ぎた頃、それまでの行列がどこへ消えたのか、突然視界が開けて静寂が訪れた。
ああ、いいね。
気に入った絵を、ゆっくり一人で好きなように眺める。
幻想的な霧の中、立ち上る暖色の太陽。
水面には淡い色の太陽が映っており、水のゆらぎが美しい。
陸地に見えるのは二つの煙突と、何かの建物。
100年前のモネも、この同じ美しい風景を見ていたのだろうか。
至福の15分間。
以前は作品説明とかくまなく読んだり、一つ一つじっくり見ていくことがほとんどだったけれど、この日みたいな見方もまた面白い。
好きな絵を、好きなように。
やはり、自分の心の惹かれるままに。
せっかくアートを観に行くなら、その方が楽しい。
係員に「閉館です」と声をかけられるまで至福の時間を過ごせたことで、私はとても満足して美術館を後にした。