仕事すがら、空を眺めた。
この時節特有の、淡い青色の空に、
ぷかぷかと雲が浮かんでいた。
不思議な形だった。
なぜあの形なんだろう。
その小さな雲は、ヨチヨチ歩く子犬のように見えた。
眺めていると、昔飼っていた犬を思い出してきた。
しばらく見ていると、首をすくめるヒヨコのようにも見えてきた。
故郷の夏祭りの屋台を思い出した。
手を引いてくれたのは、祖父だったのか。
用事を済ませて戻ると、すでにその雲が消えていた。
ものの5分ほどだったのに、
あの雲はどこへ行ったのだろう。
デスクに戻った私は、ふと思う。
もしかしたら、
あの雲のほうが、
私がどこへ行ったのだろう?
と思っているのかもしれない。
同じように、あの子犬も、祖父も。
きっと、いつも、どこかで。