先日、知人から大きなブリをいただいた。
ブリというと、北陸・富山は氷見のブリが有名だが、最近は気象変動の影響か不漁が続いていると聞く。
いただいたのは、三重県は尾鷲であがったブリだった。
氷見の代わりなのかは分からないが、最近は春のこの時期に見事なブリが上がるようになったそうで、この時期のブリは脂の乗りがほどよく、身が締まって美味しいそうだ。
そんなこの時期のブリを「桜鰤」と呼んで、ブランド化しようという目論見もあるそうだ。
いただいたのは、そんな見事な「桜鰤」だった。
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仕事を終わって帰宅した私の目に入ってきた、大きな発泡スチロールの箱。
中身は見事な半身が。
ふだんはスーパーの鮮魚売り場のパックに入った切り身くらいしか目にしないが、さすがにこのサイズはインパクトがある。
三枚におろされた状態まではさばいてあってよかった。
さすがにこのサイズの大きさの魚を三枚におろすのは、素人には厳しい。
サランラップと比べても、その大きさが際立つ。
YouTubeで鰤のさばき方の動画を見て、勉強する。
魚の背にあたる側の方を雄節(おぶし)、お腹の側の方を雌節(めぶし)と呼ぶそうで、一般的に雄節の方は脂肪が少なくあっさりとしていて、雌節の方が脂が多くこってりとした味だそうだ。
鰹節にすると、その脂の違いで使う料理を使い分けたりするそうだ。
つくづく、料理というのは奥が深い。
真ん中の線に沿って雄節と雌節を切り分ける。
雄節についてくる中骨を削ぎ落とす。
あとはお好みの大きさに切り分けていく。
塩焼き、照り焼きの場合は皮付きのまま、刺身の場合は皮を尻尾の側から剝いで、切り分けていく。
刺身にしてみたが、なかなか難しい。
美しい切っ先の立った刺身というのが、いかにすごい技術でつくられているか。
何でも自分でやってみると、その凄さがわかる。
まだ先は長いが、刺身醤油でぜいたくにいただく。
脂の乗りが「ほどよい」と聞いていたが、ほどよいどころか、醤油を弾くくらいのものすごい脂の乗りだった。
旬のものは、美味しい。
残った身をさばいていきながら、一緒に同梱されていたアラを炊く。
砂糖、みりん、酒。
この三つで炊けば、たいていのものは美味くなる。
コトコト煮て、あら炊きに。
肝が見事なくらい大きかったので、別で生姜と一緒に煮込む。
ほどよく中まで火が通ったくらいの火加減で。
肝煮もまた、美味しい。
日本酒がほしくなる味だ。
残った切り身を冷凍に。
半分はそのまま、半分はタレに漬けて。
しばらくは、夕食がブリ祭りになりそうな予感が。
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すべての工程が終わったのは、日付も変わったあたりの時間だった。
それでも、やはり料理をしていると、頭が空っぽになる気がする。
それ以外のことを考えられないからだろうか。
ランニングと同じように、瞑想と似ているのかもしれない。
そう言ってしまうと、何でも似ていることになってしまいそうだが。
しばらく手から魚の匂いが取れなそうになったが、それもまたよし。
できあがった料理と切り身の量を見て満足した、桜鰤と格闘した夜だった。