この時期に咲く花たちは、数少ないなれど冬の世界を彩ってくれる。
よく見かけるのは、山茶花と椿だろうか。
古来より、冬から春を彩る花として愛でられてきた二つの花。
両者はよく似ている花でもあり、見分けるのは難しい。
花の形が筒状なのが椿、平面で薄いのが山茶花。
葉のふちのギザギザが浅いのが椿、深いのが山茶花。
そう聞いてみたところで、ぱっと一つの花を見たときに、その花が椿か山茶花なのかを見分けるのは難しい。
比較というのは、比べる対象があって初めて成立するわけで。
比較対象の無い中で、椿と山茶花を見分けるのは至難の業だ。
冬の透明な陽の光に映える赤い花。
さあ、どちらだろうか。
花は筒状のように見えるが、葉ののこぎり型は深いようにも見える。
けれど、簡単にそれを見分ける方法が、もう一つある。
その花の散りざまだ。
花びらを散らす山茶花と、花びらを散らさず花首のまま落ちる椿。
その散りざまを見れば、どちらの花かがすぐに判別がつく。
足元を見れば、花びらの絨毯。
先ほどの花は、山茶花だったようだ。
名前が分かると、また一段とその対象が愛おしくなる。
朝の道すがらの椿。
「加茂川」という種類のようだ。
毎年、自宅の近くで咲いて、そしてそのままの姿で散っている。
自ら散って道を彩る山茶花と、散っても自分でいる椿。
どちらも、それぞれに美しく。
桜もそうだが、花の美しさと散りざまというのは、密接な関係があるらしい。
人もまた、同じなのかもしれない。