神無月も、晦日。
振り返れば、今月の頭に中秋の名月を眺めていた。
その満月も、欠けてはまた満ち、今日はまた満月。
同じ「月」のなかに、二度満月があるというのは太陽暦ならではだが、どこか得をしたような、どこか特別なひと月のような、そんな感じもする。
澄んできた秋の夜空に浮かぶ満月は、やはり美しく。
それでいてどこか、何かを探して、問いかけてくるような面持ち。
暦も、名前も、数字も、人のつくりしもの。
月はいつも変わらず、ただその顔を夜空に映す。
晴れの日も、分厚い雲の向こうでも。
いつか見た、満月。
遠出をした帰りだったのだろうか。
父の運転する車、母が助手席にいた。
その途切れ途切れの会話を、月を眺めながら聞いていた。
遅くなった帰り路のこと、後部座席の私はもう眠っていると思っていたようだった。
子ども相手ではない、その大人の会話に入りたくて。
どこか、寂しさを覚えた。
はやく、大人になりたい。
ぼんやりと、そう思った。
月は、車がどこまで進んでも、追いかけてくるように、車窓からぽっかりと浮かんでみた。
あれからどれくらい、経ったのだろう。
前の座席の二人と、同じくらいの年齢にはなったけれど。
どこか、その寂しさは、そのままでいる。
そんなことを想いながら。
神無月、二度目の満月を見上げる。
今月、多くの月が見られてよかった。
満月も、十三夜も、そして新月も。
明日は、もう霜月。
月は、きっとまた変わらずに、その姿を映してくれる。