時に啓蟄、あるいは桃始笑・ももはじめてわらう。
桃の花が咲くころ。
花が咲くことを笑うと表現する、ことばの美しさ。
梅が咲き、桃が笑い、桜も蕾が膨らみ。
いつしか、空の色も変わり。
春は、過ぎてゆく。
桃の花は咲き、誇り、いつしか枯れて、その花弁を散らす。
そしてまた、一年後に「始めて」笑う。
何度も繰り返しても、いつもそれは「始めて」だ。
ロックバンドは次々と現れ、次々と去るだろう。
でも、ロックンロールは永遠に不滅だよ。
UKの誇るロックスター、キンクスのレイ・デイヴィスは、かつてそう語った。
桃の花、あるいは自我は、現れては、消えていく。
個体としての何かは、特に意味があるものでは、ないのかもしれない。
それでも、毎年、桃の花は笑う。
毎年、「始めて」笑うのだ。
風と、光と。
訪れた、春とともに。
桃始笑、ももはじめてわらう。
桃ではないようだが、春の色。